■政府が原発政策を転換 現役官僚が語る「世界から見ても異常な事態」
国の原子力政策にかかわり、この突然とも見える政府方針の転換に大きな疑問を抱く霞が関の現役官僚が、報道特集の取材に応じた。
現役官僚・佐々木健一氏(仮名)
「事故を起こした日本自身がですね、もう原子力推進に舵を切ることはやはり非常に世界から見ても異常な事態が今起ころうとしてるんじゃないかな」

背景には、ウクライナ危機に端を発した電力需給のひっ迫があると言われる。電気代の値上げも続き、12月1日には節電も呼びかけられた。政府は運転期間延長の方針を今月末に取りまとめるという。
ある政府関係者はこう説明する。
政府関係者
「単なるエネルギー問題ではないんですよ。安全保障に直結したエネルギー問題なんです。ロシアの天然ガスが止められ、台湾侵攻なんて起きたら、もう本当に大変なことになりますよ」
それでも佐々木氏は、これだけの政策転換のためにはもっと国民的議論を尽くすべきだと指摘する。
現役官僚・佐々木氏
「ここぞとばかりにウクライナ危機に乗じて一気に進めている。今でも福島でもたくさんの方が避難して生活されている。原子力のことを心配だ不安だと思っている国民の方がたくさんいらっしゃる。そういう中でとにかく我々は民主主義の国ですから徹底的に議論して、議論したうえで結論を出すということがとても大事」
原発事故から1年後の2012年6月、当時官邸前で行われた反原発デモ。若者から高齢の世代まで大勢の人が声をあげた。ピーク時の参加者は20万人とも言われる。
しかし…
11月のデモの参加者は、わずか125人だった。
現役官僚・佐々木氏
「世の中の注目が集まってない中で、こっそり方向を変えてしまおうというのが今の状況」
■非公開のGX実行会議 メンバーからも異論の声
原発政策の転換は、脱炭素社会に向けた「GX」=グリーントランスフォーメーション実行会議で議論されている。
現役官僚・佐々木氏
「大体、政府が横文字を使うときはイメージをフワッとした形で何を議論しているか注目が深まらないうちに結論を出してしまおうということを狙いとしている」
この会議は非公開だ。そして、総理の指示から4か月で結論が出ようとしている。これにはGX実行会議のメンバーからも異論の声があがる。

GX実行会議メンバー
「経済界の利益を代弁する人が多く、原発ありきで議論が進んでいる。非公開の議論もおかしいし、国民に対する説明不足。ちゃんと向き合うべきで、こそこそやるべきではない」
年内に「運転期間延長」の政府方針が決まれば、議論は国会へと移る。国会でどう法改正を行うのか、政府内ではある手法が検討されている。
これは、番組が入手した政府内で作られた内部文書だ。
内部資料
「来年の常会に提出予定のエネ関連の『束ね法』により」

「束ね法」と記されている。これは、複数の法案を1つに束ね、国会で審議することを言う。元総務大臣の片山善博氏は、その狙いをこう説明する。
元総務大臣 片山善博氏
「そそくさと法律改正案を通してしまいたいとき、非常に便利な仕組み。別々に審議すべきものが束ねられているとすると、それはやっぱり姑息だと思いますね。国家100年の計のような、本当に将来にわたって重要な意味を持つ法案、これは本当に徹底的に審議しなきゃいけない」

拙速な議論になっていないのだろうか。西村GX担当大臣に聞いた。
西村康稔GX担当大臣(11月29日)
「様々な観点からご議論をいただいてきたものと考えております。今後も例えばパブリックコメントを求めるなど、引き続き国民の皆様のいろんなご意見を聞きながら、ご理解をいただきながら進めていきたい」

ーー年末までに決める必要ってありますか?一部ではウクライナ危機に乗じてという指摘もあるが?
西村康稔GX担当大臣
「エネルギーの安定供給とカーボンニュートラルの実現、これはもう待ったなし。早く方向性を出さなきゃいけない課題」