■「養育費は、子どもを中心に。もらうのは子どもの権利」

多摩ニュータウンでひとり親のために食料支援を行う一般社団法人祥鶴の荒井永理さん。自身もシングルマザーで養育費は支払われていない。子ども食堂から支援活動を始めたが、コロナで活動が滞り、フードバンクや地元の店から食料を引き取り、ひとり親に配布している。最近は、コロナの影響で、仕事を失うひとり親も目立つという。食料配布の現場では、エネルギッシュで明るく振る舞う荒井さん。「明るくしないと」と気を吐いた。ひとり親家庭との情報交換も欠かさない荒井さんに養育費不払い問題について聞いた。
養育費は、受け取れないシングルマザーもいれば、一生懸命働き月々の養育費を支払っている父たちもいる。ただ、現時点で養育費は、意識としてどうしても離婚した夫婦同士が「取った」「取られた」とお金の問題になってしまっている。一方、それぞれの複雑な事情はあるとはいえ、養育費をもらうのは子どもで、子どもにはもらう権利がある。子どもの福祉を中心に考えなくてはならない。法律も、親同士での話し合いが前提で作られていると感じていて、制度の改正に期待していると話す。

■法務省は?国は何を?

法務省では「法制審議会」で制度改正のため専門家が議論を続けている。元夫が行方不明となり、強制執行できないケースについても議論されていて、裁判所が特例的に居場所を把握することについても議論されているという。申し立てた人の経済的、心理的な負担を極力減らすことが目的だ。

また、離婚届けについても、QRコードを記載することで離婚前の取り決めについてまとめた法務省のページにアクセスできる新たな取り組みも行われている。ただ、法改正までは、まだまだ長い道のりだ。

一方で、長引くコロナ禍によってひとり親家庭の生活もギリギリまで追い詰められている。養育費の不払いは、早急に解決すべき問題だ。ただ、それに加えひとり親家庭をサポートし、国として子どもを貧困に陥らせないような取り組みが必要ではないだろうか。法務省に限らず、横断的な対策が求められている。

(取材:TBS報道局社会部 奥野宏輝)