薬害スモンとは、キノホルム剤(整腸剤)服用による薬害事件です。当初、原因不明の奇病やウイルス性の伝染病ではないかと言われ、スモン患者は身体の疾患だけでなく差別や偏見にも苦しみました。(アーカイブマネジメント部 森 菜採)

スモンの症状

スモン(SMON)は「亜急性脊髄・視神経・末梢神経障害(Subacute myelo-optico-neuropathy)」の頭文字からつけられた疾患です。
患者は1955年(昭和30年)頃から報告され、1969年(昭和44年)頃ピークに達します。
腹痛や下痢の腹部症状に続き、足先から始まるしびれや下肢のつっぱり・脱力、排尿困難などが見られる神経疾患で、約半数の患者に運動機能障害がみられました。視力障害も20~30%の患者でみられ、重症化すると失明や脳幹障害により死亡に至るケースもありました。

病床での下肢の反応検査/患者のリハビリ

原因判明

当初は新しい感染症かと疑われましたが、実際は整腸剤として摂取したキノホルムが腸管から吸収され、神経組織を侵すことでスモンを発症していたことがわかりました。
スモン患者の舌、便、尿が緑色になることがあり、尿中の緑の結晶の分析によりキノホルムが原因と判明しました。当時、整腸剤として広く使われていたキノホルムをどの患者も服用しており、服用量と発症の相関も確認されました。

透明無色のキノホルムで実験。水溶液を加えると患者の尿は緑色に(緑尿)/緑舌

これを受け、厚生省は1970年(昭和45年)9月にキノホルム使用の禁止を通達。販売中止と使用見合わせの措置によりスモンの発生は激減し、最終的になくなりました