■クレームを改善したら見たこともないサービスができあがった
いわゆる“従来型”の施設では、塗り絵・折り紙・ペットボトルボーリング、お手玉…といったアクティビティーが多く、特に男性は「やりたくない」「行きたくない」と感じる人も多いのだという。そんな中、麻雀やパチンコができるラスベガスは従来型の施設に比べて男性の比率が高い。
そして、一般的なデイサービスとの違いはギャンブルだけではない。まずは黒いワンボックスカーにLas Vegasと金色の文字が入った送迎車。介護事業者の送迎といえば、白いワンボックスに〇〇デイサービスといった事業者名が入ったものが大多数だというが、黒を選んだのは、かつて従来型の施設で受けた利用者からのクレームがきっかけだという。
森社長
「朝、迎えにいったら利用者さんに怒られたんです。『そんな事業者名の入った白い車で来たら俺が介護施設に行ってるのがバレるだろう』って」
デイサービスに通っていることを近所の人に知られたくない、という人も多いことから、シンガポールでカジノとホテルの間を送迎する黒いワンボックスをまね、介護施設感を消したのだそうだ。
また、病院のようになりがちな内装にはシャンデリア風の照明を設置。従業員の服装も、旅行気分になれるようなキャビンアテンダントの制服をモチーフにするなど、介護施設を感じさせず、楽しく過ごしてもらえる場所を目指している。
■運動したくない人も自発的に運動する仕組みとは
始めた当初は「介護保険、税金を使ってこんな遊びをするなんてけしからん」という批判もあったことから、「税金を使っている以上結果を出す。利用者の要介護度や生活の改善につなげるよう努力している」という。では具体的にどんなことが行われているのだろうか。
まず、麻雀やパチンコをするためにはゲーム料を支払わなくてはならない。といっても、本当のお金ではなく、「ベガス」という施設内通貨である。
毎日行われる機能訓練(体操・ストレッチ)に参加するとベガスをもらえるため、あまり体を動かしたくない、という人もゲームに参加するためには、と自発的に運動に参加している。

また、麻雀やパチンコに勝てばベガスを増やすことができるほか
▼みんなの前でストレッチする
▼1か月休まない
▼前より元気になったと感じる(自己申告)
といったことでもベガスをもらえるシステムになっていて、たくさん稼いだ人は表彰される。1回の体操でもらえる額は1万ベガス。2021年、1位の人はなんと1億461万ベガス獲得したという。
当初は利用者がギャンブルにのめり込まないか心配の声もあったが、むしろ健康が促進されたとの声も多く、ギャンブル依存症になった人もいないということだ。

















