感覚過敏の方が「落ち着くための場所」
感覚過敏の人などに向けた「カームダウン・スペース」を知っていますか?
“カームダウン=calm down”という英語は「落ち着く」とか「気持ちが静まる」といった意味で“カームダウン・スペース”とは、「落ち着く場所」を指します。
発達障害や精神障害などがある人の中には、光や音、においなどで体調を崩したり、パニックになったりする“感覚過敏”に悩む人もいます。
「カームダウン・スペース」は、そうした人が落ち着くための場所、心を静めるための専用のスペースというわけです。
こうしたスペースがいま広がり始めている背景について、感覚過敏の課題を解決するための研究や商品、サービスの開発をしている「感覚過敏研究所」所長、加藤路瑛さんに聴きました。

「感覚過敏研究所」所長・加藤路瑛さん
「『カームダウン・スペースは』東京オリンピックの開催に向けてユニバーサルデザインが検討された中で採り入れられたもので、正式名称は『カームダウン・クールダウンスペース』とか『カームダウン・クールダウンルーム』というふうに呼ばれて、JIS規格のピクトグラムも作られています。その他に東京オリンピックに向けて、国の玄関である成田空港に設置されたりとか、オリンピックの会場では、有明アリーナだったり有明テニスの森などにも用意されました」
加藤さんは幼少時から、皆が騒いでいる声や騒がしいイベントなどで体調が悪くなったり、食べ物や香水の匂いを嗅いだり、街場の様々な匂いが混ざった場所に行くと、気持ちが悪くなったりする“感覚過敏”の当事者です。
13歳の時に「感覚過敏研究所」を設立し、現在は19歳の大学生でもあります。
「カームダウン・スペース」は、東京オリンピックを機に、空港や競技場、美術館、役所や教育機関、最近は遊戯施設などにも徐々に設けられるようになってきました。
現在開催中の大阪・関西万博では、光や音、映像などの演出があるパビリオンの出展者に、こうしたスペースの設置を推奨していて、休憩所やパビリオンなど40か所ほどに設けられています。
「カームダウン・スペース」といっても、個室やボックス型、パーティションで仕切られたものなど様々な形態があります。そうした中で、「カームダウン・スペース」に必要なポイントが3つあると話してくれました。
感覚過敏研究所 所長 加藤路瑛さん
「私たちで考えている『カームダウン・スペース』のポイントというか、重要な点というのは、まず『人目を気にしなくて良いというところ』と、『遮音できている』というところと、『遮光できているか』というところになります。ただ今のところ、その3つ全てをクリアしているところが、まだまだない。難易度が高い状態になっています」
遮音=音をさえぎることはできていても、消防法の観点から天井は開けなければならなくて、照明が入ってしまったりとか、遮光=光はさえぎっても、音は普通に聞こえてきてしまったりとか…。
設置する場所の特性や防犯上の観点などもあって、すべての条件を揃えるのは、なかなか難しいようです。