「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家男性が残した、約13億円の遺産を田辺市に寄付するとした遺言書。無効か有効かをめぐり裁判に発展していますが、2審も「有効」とする判決を下しました。

 和歌山県田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助さんは、貸金業や酒の卸売業などで財をなし、自宅にはいつも多額の現金や貴金属が置かれていました。

 「Q.この時計でおいくらぐらい?」
 野崎幸助さん「450万」「私はいつも7億ぐらい自分の家に置いている」

 ところが…。

 「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする 野崎幸助」

 野崎さんが2018年に急性覚醒剤中毒で死亡した後、“遺産の約13億円を田辺市に寄付する”と、赤いペンで手書きした遺言書が見つかり、野崎さんの親族は2020年、遺言書の有効性をめぐって裁判を起こしました。

 親族側は「筆跡は不自然なうえ、田辺市に寄付する合理的な動機が見当たらない」と遺言書は無効だと主張しましたが、1審の和歌山地裁は去年6月の判決で「野崎さん固有の筆跡や癖が認められることから、不合理な点は見当たらない」として「遺言書は有効」と判断しました。

 1審判決を不服とした親族側は「野崎さんが書いた別の書状の署名を透写したうえで、偽造された可能性がある」などと訴え、大阪高裁に控訴。

 しかし、19日の判決で大阪高裁は「遺言書の署名の文字が、別の書状の署名に酷似する事実があるとしても、そのことによって遺言書が偽造されたことが推認されるとは言えない」として、控訴を棄却。1審に続いて、遺言書は「有効」と判断しました。

 野崎さんの死亡をめぐっては、当時妻だった29歳の女性が殺人などの罪で起訴されましたが、和歌山地裁は去年12月に無罪を言い渡し、検察側が控訴しています。