初期症状は?

(東洋産業 大野竜徳さん)
「典型的な食中毒による中毒症状を少しご紹介します。それぞれの植物やキノコによって症状は異なりますが、食後しばらくたってこんな症状が出たら要注意です。

<初期症状>
まずは嘔吐、吐き気、腹痛、胃のむかつき、下痢(水便)、発汗、冷や汗、めまい、頭痛、強い喉の渇きなどのいずれか、あるいは合わせ技で出ます。

少し遅れて手足のしびれや力が入らない、視覚・聴覚の異常といった神経症状が現れることもあります。

軽い場合は、食べて30〜60分後に腹痛や嘔吐が出て、数時間後に回復することもありますが、重い中毒では次のステップに進行します。

<症状が進行>
嘔吐や下痢が長引いて脱水が進み、肝機能や腎機能が障害され、神経麻痺や呼吸困難、意識障害、ショック状態に至ることもあります。

毎年死亡例が出るのは、こうした重症例です」

強い毒をもつ植物は命を落とす事故につながるおそれ

(東洋産業 大野竜徳さん)
「特に怖いのが、『原形質毒性型」』の毒キノコや毒草です。

たとえば、イヌサフランのような強い毒を持つ植物では、摂取後2〜12時間たって本格的に症状が始まるため、受診が遅れがちになります。

重篤な呼吸困難や多臓器障害を起こし、高齢者や体力が落ちている人では命を落とす事故につながるのです。

何とか助かっても、数日後に白血球減少や肝・腎障害が出たり、摂取後1週間から脱毛が始まり3週間ほど続いたりと、後遺症に苦しむこともあります。

実際に、園芸用プランターで育てたイヌサフランの球根【画像①】をタマネギと間違えて調理し、食べた80代の方が激しい嘔吐と下痢ののち、2日後に亡くなったという報道もありました」

【画像①】玉ねぎの球根と見誤ることがある

「イヌサフランは野菜と見比べれば似ていないようにみえますが、見慣れていないと、ジャガイモやタマネギと勘違いしてしまうようです。

また、道端に生えたチョウセンアサガオの根を「ごぼう」と勘違いし、きんぴらにして食べてしまったケースも。食後にめまいや口の渇き、動悸が出て病院へ搬送されました。

チョウセンアサガオは全草が毒で、摂取量によっては意識障害を起こす危険があります。

実はこの植物、江戸時代に医師・華岡青洲が世界初の全身麻酔手術を成功させた際に開発した麻酔薬『通仙散』の材料になったもの。

この麻酔薬はほかの植物も使われていますが、飲み込んで使用したそうです。そんな強い作用のあるものを『野菜』と思って食べれば、当然食中毒になります」