万博が閉幕しても母国に帰れない。日本で新たな道を模索するイエメン人スタッフの思いとは。

 大阪・関西万博閉幕まで1か月を切った9月14日。約30の国と地域が共同で展示を行うコモンズ館の中で、中東・イエメンのブースは着せ替え体験で人気を集めています。

 万博で母国の魅力を伝えるため来日したジャラールさん(39)。

 (ジャラールさん)「いろんな体験をさせていただいてうれしいです。(ここまで)はやい。はやすぎる」

 閉幕が近づくなか、ジャラールさんには大きな心配事があります。

 (ジャラールさん)「(内戦は)万博に来てから収まっていたんですけど、悪化してきて状況が悪くなっているんです」

 イエメンでは2015年以降、反政府勢力と暫定政権の内戦が続いていて、いまも深刻な状況にあるといいます。

 ジャラールさんは現在、万博会場で働くことを目的とする「特定活動ビザ」を持っていますが、その期限は来年の4月まで。閉幕後も日本で働くためには「就労ビザ」への切り替えが必要ですが、取得には日本企業との雇用契約が条件となるため、就職先を見つけなければならないのです。

 (ジャラールさん)「自分で努力して日本語も勉強しましたし、新しい人生を築いていきたいと思ってるんです」

 イエメンに妻を残して来たジャラールさんにとって、仕事終わりのビデオ通話は日課です。

 (ジャラールさん)「(Q家族に何と言いたい?)正直…会いたい。ビデオ通話しても触れないし。ちょっとね…きついなと思っています」

 イエメン国内の危険な状況が高まる中、家族からも日本に残るように言われているといいます。

 (ジャラールさん)「とにかくあんたはそこで頑張りなさいって言われているから。ここで一生懸命頑張って、将来(家族が)日本に来ることができたら絶対来てねって」

 14日、ジャラールさんが参加したのは、万博で働くスタッフを対象に開かれた就職イベント。ホテルや物流など、100社以上が参加しコミュニケーション能力に長けた即戦力となる人材を探します。

 日本語能力試験の中で敬語やビジネスにおいてもスムーズにコミュニケーションがとれる最難関の「N1」という資格を持つジャラールさん。ホテルを運営する企業の担当者の目にとまります。

 (リブマックス・人事総務部 大川洋平さん)「(万博で)ブースの責任者とマネジメントも担当されている方だったので。将来的にはマネージャーにもなっていただける人材だなと」

 4つの企業からオファーがあったというジャラールさん。いつか家族と一緒に過ごす日を夢見て孤独な闘いが続きます。

 (ジャラールさん)「みんなすっごい心配してくれてるんですよね。これはやっぱり何とかしないといけない。一生懸命頑張っています。皆さんの期待に応えるためにも」