34年ぶりに東京で開催される世界陸上が、13日に開幕。大会3日目の15日には、今年8月に今季世界2位の記録(12秒92)を出し、一躍金メダル候補となった男子110mハードルの村竹ラシッド(23、JAL)が登場する。

パリ五輪金メダル超え!衝撃の大記録

「うわぁー!ほうぁぁぁー!!」

Athlete Night Games in FUKUI2025の男子110mハードル決勝。ゴールを切った瞬間、会場にどよめきと歓声が沸き起こる中、咆哮しながら駆け抜ける村竹。夜空に浮かぶ掲示板に表示された数字は「12.92」。2025年8月16日、男子110mハードルにおいて日本人が初めて13秒台を切った瞬間だった。この記録は今年5月にコーデル・ティンチ(25、アメリカ)が出した12秒87に次ぐ今季世界2位タイであり、アジア歴代2位、世界歴代11位タイに位置し、昨年のパリ五輪の優勝タイム12秒99をも上回るとんでもない記録だった。

日本が誇るハードラーの原点

トーゴ人の父親と日本人の母親を持つ村竹は、幼い頃から足が速かった。小学5年生で陸上を始め、当初は短距離と走幅跳に取り組んでいたがハードル選手としての第一歩を踏み出したのは中学1年生の夏だった。

「ビビッとくるものがあった。これかもしれない」

中学時代に村竹は徹底的に体力と精神を鍛え上げられ、ハードルを始めてわずか1年で千葉県大会で初優勝。高校3年生でインターハイを制し、ハードラーとして順調に成長していった村竹だったが、最大のライバルが立ちはだかった。

最大のライバル・天才ハードラー泉谷駿介

「雲の上の存在」「心奪われるようなハードリング」

泉谷選手と村竹選手(2022年)

村竹が話す前日本記録保持者の泉谷駿介(25、住友電工)は憧れの存在であり、超えるべき最大のライバルだった。村竹より2学年上の泉谷は、18歳の時にU20世界陸上で銅メダルを獲得し、2019年世界陸上ドーハ大会の日本代表に選出されるなど、若くして日の丸を背負い世界と渡り合ってきた天才ハードラー。村竹はその姿に憧れ、同じ順天堂大学に入学し背中を追いかけてきた。

「在学中はずっと負けっぱなしで、まともに走って1回も勝ったことはない」

追いつき、追い越したい…そう思えば思うほどその背中の遠さを思い知らされた。