働くことができる“15歳以上の人口”が全国平均を大きく上回るスピードで減っている長崎。
“人手不足の解消”はもちろん“事業拡大”に向けて『外国人人材』を活用したいという県内企業が増える中、長崎市で海運業を営む企業が“新たな取り組み”を始めました。

長崎市にある工場で日本人従業員に混ざって休憩時間を楽しそうに過ごしているのはここで働くフィリピン人です。

森満工業 満崎 俊二 代表取締役:
「明るいなというのと、楽しそうにしてくれてるし。物覚えももちろん早いですし、実技としても(覚えるのが)早いです」
彼らは母国から遠く離れた長崎で日々、技術を磨いています。


森満工業 今道 悠太さん:
「負けてられんみたいな。自分も頑張らないとと思います」

彼らの様に長崎県内で働く“外国人労働者”の数は年々増加傾向にあり、外国人を雇用している事業所の数も増加しています。

要因の一つが人口減少です。
労働局によると、特に、働くことができる“15歳以上の人口”は、全国平均を大きく上回るスピードで減っています。

長崎労働局 小城 英樹 局長:
「全国ではだいたいこの5年間を見てみますと、1%ぐらいの減少になっているんですけど、長崎では4.5%の減少になっているんです。全業種において人手不足基調にあるとみています」

このように“外国人人材”を必要とする企業が増える中、大手企業と組んで新たな事業を始めたのが、今年で創業137年となる長崎市の澤山商会です。

澤山商会 中村 禎二 代表取締役社長:
「トライ&エラーで毎日勉強しながら取り組んでます」

創業当時から長崎港で外国船への物資の補給など貿易に関わる事業を展開。
その一つに“外国人乗組員の宿泊先”や“飲食をサポート”する事業があります。
そこに新規ビジネスのヒントがありました。

澤山商会 中村 禎二 代表取締役社長:
「船員さんには様々な国籍の方がいらっしゃいまして、例えば“英語のしゃべれない乗組員さん”もいらっしゃいましたし(宗教上の理由で)“食事制限のある方”。そういった知見、ノウハウもあることですし、外国人人材のビジネスと親和性があるんじゃないかと」

そして2年前。大手船会社の商船三井と共同で立ち上げたのが『フィリピン人人材と企業をマッチングする事業』です。

澤山商会が長年の取引で培ったネットワークで長崎における需要を掘り起こし、船員として多くのフィリピン人を雇用してきた商船三井の経験を活用します。

商船三井 外国人人材事業チーム 小池 秋乃チームリーダー:
「長崎でのネットワーク、そこは澤山商会さんが圧倒的に持っていらっしゃいますので。船員の育成、一緒に働いてきたというリソース、ノウハウというものが私どもが長年培ったものであり、外国人の人材紹介においていかされるものだと思っております」


今年7月、船の部品の製造などを手掛ける長与町の企業が、この事業で初めてフィリピン人3人を受け入れました。


企業側が重視していたのは『従業員同士のコミュニケーション』で、この事業では採用試験や採用後の教育でも支援します。

森満工業 満崎 俊二 代表取締役:
「他の国の方々と触れ合うのに適しているかどうか。より能力があるかどうかというテストがあったりするんですけど、そういったものを教えていただいて。アドバイスも受けながら。ダーウィー先生を紹介していただいたのも澤山商会さんですし」

フィリピン人従業員:「おはようございます」
日本語教師:「けさ何を食べましたか?」
フィリピン人従業員:「私は卵とご飯を食べました」


特に力を入れているのはアフターケアです。
今回のケースでは澤山商会は『彼らに日本語を学ばせたい』企業側に“日本語教師”を紹介しました。
今後は、従業員だけで指導ができるよう、業界ごとのニーズに合わせた『(指導用の)日本語教育プログラム』を作成する方針です。

澤山商会 小山 愛美さん:
「どういった形で外国人を雇用されていくかっていうのが それぞれ(企業によって)違ってくると思います。各業界の中で必要な日本語というのもあるでしょうし。
それぞれで役に立つようにという形で『オリジナルの日本語プログラム』を提供していきたい」

澤山商会では多くの産業が存在する長崎で、各業界で、どんな外国人人材が必要とされるのかを研究し、いずれは事業を全国に広めたいとしています。

澤山商会 小山 愛美さん:
「製造業もありますし、農林水産業もありますし、観光もある。
色んな産業が集約している町ですので、長崎っていうのが“全国のモデルケース”になるのではないかと。
今、課題を抽出している最中で、課題が抽出できたら簡単なマニュアルじゃないですけどそういったものまで(制作)できればと」

人材不足を解消し、地場産業活性化の一助となれるか──
澤山商会の取り組みの今後に注目です。
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企業側のニーズにも変化が出てきています。

森満工業の満崎社長は「人手不足はもちろんだが、“海外展開”を見据えた際の社員教育の一環として、今回、外国人人材を受け入れた」と話していました。

長崎労働局の小城局長も「円安の影響などもあり、海外から見た日本の労働市場の魅力は相対的に下がっている」とした上で「外国人人材の受入れは安価な労働力としてではなく、“戦略”をもった上で行うことが大切」としています。