初めての日の丸、パリ五輪代表に
日本のトップランナーと汗を流した時間は、小山が飛躍する大きなきっかけとなった。2023年のニューイヤー駅伝ではエース区間の4区を任されると、3位で受け取ったタスキをトップに押し上げる走りで、チームを連覇に導く立役者に。Hondaの小川監督も「いい想定外というか予想以上の進歩を遂げているなと見ています」と話したように、9か月後のパリ五輪代表選考会では、憧れの日本代表の座を勝ち取った。
そして迎えたパリ五輪。初めて日の丸をつけて臨んだ夢舞台だったが、蒸し暑さの中で走る、夏のマラソンの過酷さを知った。湿度が70%を越える過酷なレースで結果は23位。「(8位入賞という)目標から大きくかけ離れてしまって、すごく悔しい結果となってしまいました」。
だが、その悔しさを力に変えてきた。暑熱対策として、今年からサウナに入り始めた。「パリオリンピックも気温が結構上がって、なかなか思うような走りができなかった。一つの失敗の例として暑さがあった。暑さに耐えることは陸上に活きると思っています」。汗を出すことで体内の熱を効率よく外に逃がす機能を高める狙いだ。

新しく取り入れたことがある一方、中学生の頃から17年間、1日も欠かすことなく続けてきたこともある。日課としている練習日誌には「練習の内容とひと言コメントを入れるようにしています。その日に行った練習内容、実績、タイムだったり気候だったりを書いて、その時の感想を入れたりしています」。6200日に渡り綴ってきたノートは、怪我をした際にも役立つのだという。
東京世界陸上では「8位入賞をクリアできるよう」
誠実な歩みは実を結び、再び世界に挑むチャンスを得た。舞台は34年ぶりの東京開催となる世界陸上。「結果を残したいっていうのもありますし、覚悟をもって走り切りたい」と小山は語る。
自身も10000m代表として2015年の世界陸上北京大会に出場した設楽は「楽しみですよ。小山選手は見てる人を楽しませてくれるランナーですのでやってくれると思います」。恩師の青木さんも「一番は楽しんできてほしいなって。ずっと3つの『あ』っていって、『焦るな』『あきらめるな』『侮るな』。それでずっと来たので、納得できる走りをしてもらいたいな」と小山の活躍に期待を寄せる。

8月22日に所属するHondaで行われた壮行会では、仲間から大きな声援が送られた。日の丸に「覚悟」の文字を記した小山。「パリオリンピック™のときは23位という悔しい結果を残してしまい、良い報告ができずとても悔しかったですが、今回は8位入賞をしっかりクリアできるように頑張りたいです」と力強く語った。