特殊詐欺などで得た違法収益のマネーロンダリング対策について、警察庁は不正な口座の売買を厳罰化する法改正などを検討するため、今月18日から有識者を交えた検討会を行うことを明らかにしました。

警察庁によりますと、去年1年間の特殊詐欺と「SNS型投資・ロマンス詐欺」の被害額はあわせておよそ2000億円にのぼり、依然として深刻な状況が続いています。

こうした詐欺には、警察庁が治安上の脅威と位置づける「匿名・流動型犯罪グループ」の関与がみられ、他人名義の口座を悪用しだまし取った金をマネーロンダリングをしている実態が確認されているということです。

この状況を受けて、警察庁はきょう(11日)、弁護士や大学教授など有識者を交えた対策検討会を今月18日から行うと明らかにしました。

検討会では、口座の悪用を牽制するため、金融機関と捜査機関が管理する「架空名義口座」を利用した新たな捜査手法の導入に向け、関係法令の改正を早急に検討するとしています。

「架空名義口座」を利用した捜査は、実在しない人物の名義の口座を開設して犯罪グループに渡すことで、資金の流れを追跡し実行役や指示役の摘発につなげる狙いがあります。

また、被害金の入金に悪用される不正な口座の売買について、犯罪収益移転防止法を改正し、法定刑を引き上げる罰則強化も検討されます。

現在の個人の口座譲渡に対する法定刑は「1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金」ですが、組織犯罪処罰法の「犯罪収益等収受罪」では、より重い刑が科されるため、個人口座の罰則の引き上げについて国会でも対策強化を求める意見が出ていました。

さらに、SNSなどで「簡単に稼げる」などと勧誘され、他人に依頼されて違法収益を送金する行為が、正当な取引を装った新たなマネーロンダリングの手口として広がっています。検討会では、こうした詐欺行為に加担しないよう呼びかける広報啓発活動を推進する方策についても議論されます。

警察庁は今後、年内に有識者検討会を数回開いたうえで、早ければ年明けにも報告書をとりまとめ、法改正などを進める方針です。