神戸市中心部の「神戸元町商店街」で酒気を帯びた状態で車を暴走させ、助手席に乗っていた自らの妻を死亡させたほか、衝突したワゴン車の男性を負傷させた罪に問われていた男(88)。

 神戸地裁は執行猶予付きの有罪判決を言い渡しました。

▽起訴罪名は「過失運転致死傷」

 判決での事実認定によりますと、神戸市東灘区の無職・太森信男被告(88)は今年3月、酒気を帯びた状態で車を運転し、「神戸元町商店街」のアーケード内(歩行者専用道路)に進入。

 アクセルを不用意に強く踏み込んで時速約65kmまで加速させて暴走し、ワゴン車にぶつかったほか、アーケードの支柱や店舗のシャッターに衝突。助手席に乗っていた妻(当時82)を出血性ショックで死亡させたほか、ワゴン車の男性(20代)に脳挫傷などのケガを負わせました。

 道路交通法違反と過失運転致死傷の罪に問われていた太森被告は、これまでの裁判で起訴内容を認めていました。

 事故後の自宅への捜索では、被告が運転前に飲んだとみられる日本酒の紙パックが押収されていました。

▽執行猶予付きの有罪判決

 神戸地裁(入子光臣裁判官)は9月10日の判決で、「死亡した妻を勤務先に送迎するために運転を開始して本件犯行に及んでいて、運転の必要性や緊急性は認められず、経緯に酌むべきものは見当たらない。走行態様は相当危険で過失・結果は重大」と指弾しました。

 一方で「妻は被告の飲酒運転を認識していた可能性が否定できず、一定の落ち度があったとみる余地がある。負傷者も、歩行者専用道路で通行許可などを受けずに被害車両を運転していたことが、今回の事故の一因となった面があることも否めず、一定の落ち度があったといえる」と指摘。

 前科がない点や年齢も考慮し、太森被告に懲役3年・執行猶予5年を言い渡しました(検察側の求刑は懲役4年)。