TBSも「まえ」を意識した報道キャンペーン
TBSも夕方ニュース「Nスタ」を中心に『選挙の日、そのまえに。』というキャンペーンロゴと音楽を使って、都議選についての事前報道を開始し、それを参院選の事前報道につなげた。
当初は選挙関連のニュースの前に“サブタイトル”としてこのロゴを挟む程度で説明のコメントもなかったが、参院選の公示直前の6月30日(月)に「Nスタ」で井上貴博キャスターが次のような言葉で説明した。
「来月20日の参院選に向けて、私たちは『選挙の日、そのまえに。』と題しまして“事前報道”に力を入れていきます。私の思いとしましては公示後、選挙期間中にこそ、1秒でも長く、選挙に関する情報をみなさんにお届けしたい、この一心です。みなさんが投票先を考える上で役立つ情報をお伝えしていくためにどんな形がありうるのか、どんなことができるのか、番組スタッフはもちろんのこと、政治部を始めとした報道局、JNN全体で話し合いを進めてきました。今も進めています」
“事前報道”に力を入れる、という点が注目される。井上キャスター自身も前年の兵庫県知事選などの直後に番組内で選挙報道のあり方を考え直したいと繰り返し公言してきた。
これまでのテレビの選挙報道では、投票が終わってからの「開票特番」になって初めて、キャスターが各党の党首に核心をつくような質問をぶつけたり、それぞれの政党の今後の課題や問題点などを辛口に報道する傾向があったが、投票が締め切られる前には(つまり事前には)、各番組とも質疑の時間はあまり割かずに表面的な報道に終始させてしまう傾向があった。
そんな状況では「テレビよりもSNSの方が真実を伝えている」と考える有権者がいても当然かもしれないという井上キャスターの自戒が伝わってくるような言葉だった。彼を含めて関係者が議論を重ねて“事前報道”を重視する姿勢を明確にしたのだろう。報道局、JNN全体という言葉から、「ニュースや報道番組に限定した」報道キャンペーンだということがわかる。
一方で、早朝の情報番組「THE TIME,」でも有権者の「みなさんの役に立つように」と各政党の「現状と課題」を安住紳一郎キャスターが伝える比較的短いコーナーを2週にわたって放送した。『選挙の日、そのまえに。』のロゴは使用せず、報道局とは別な流れかもしれないが、それでも局全体として“選挙に役立つ”ことを重視する姿勢の表れといえた。