キャンペーンロゴを使っていち早く改革を打ち出した日本テレビ
民放テレビでもっとも早くニュース番組の中で自局の選挙報道についての改革方針を視聴者に示したのが日本テレビだった。東京都議選の告示直前の6月9日(月)、「news every.」で井上幸昌政治部長が兵庫県知事選などで出回ったフェイク情報について対策が不十分だったことを率直に表明した。
「私たちはこうした情報が正しいかどうかを選挙期間中にきちんと検証できていませんでした。結果、ネットに真偽不明の情報が広がり、大手メディアは十分に役割を果たしていないという疑問の声もあがりました。選挙において公平に伝えることは重要な大原則です。これは変わりません。しかし、これまで私たちは公平性を意識しすぎるあまり、投票前の選挙報道で萎縮していた面があったと率直に受けとめています。選挙は私たちが生きる民主主義の根幹です。取材で知り得た本当のこと、取材によって得られた投票に役立つ情報を丁寧に伝えてまいります」
こう決意表明した日本テレビは『選挙前に考える/それって本当?』という統一キャッチフレーズをつくり、それにイラストや独自のフォントをデザインして、短いアニメにしたり、ジングルを加えて局独自のロゴにするなどして毎回の選挙報道で使うようになった。
日本テレビは主に夕方ニュースの「news every.」と夜ニュースの「news zero」の中で選挙報道のキャンペーンを実施。SNSで発信される真偽不明の情報も扱い、誤解されそうなものは「ファクトチェック」してしっかりと伝えるという姿勢を明確に打ち出した。都議選と参院選の全期間を通じて統一したロゴで報道し続けたことで視聴者にはわかりやすい報道展開だったといえる。
さらに日テレはお昼のニュース番組「ストレイトニュース」や早朝ニュース番組の「Oha!4」でも、参院選の選挙期間中に『投票前に考える/政党フカボリ』と題して、主な政党について現状と課題を日替わりで短く伝えた。この際にキャスターが「日本テレビでは投票の参考になるよう各政党の現状や課題についてシリーズでお伝えしていきます」と毎回、説明コメントを入れていた。
一種の報道キャンペーンだったが、ニュース番組での共通の扱いという前提で、情報番組は除外された。だが、情報番組でも「ZIP!」内では参院選の投票を水卜麻美キャスターが促す短いキャンペーンスポットを繰り返し放送するなど選挙に関心を持ってもらうための工夫が見られた。筆者が記憶する限り、こうした様々な番組を使った横断的な選挙キャンペーンはこれまでなかったものだった。