ダイヤモンドリーグ、イコール世界陸上ではない

東京世界陸上の本命と見られている選手たちが、8月のダイヤモンドリーグで敗れている。800mで今季ダイヤモンドリーグ5戦4勝だったE.ワニョニイ(21、ケニア)が、ローザンヌ大会で2位。ハンマー投はダイヤモンドリーグ種目ではないが(最終戦で実施されない)、ダイヤモンドリーグ以外の試合も含めて8戦6勝のE.カツバーグ(23、カナダ)がシレジア大会2位。2人とも昨年のパリ五輪金メダリストである。

砲丸投でダイヤモンドリーグ6戦3勝のJ.コヴァクス(36、米国)はシレジア大会2位、円盤投で今季ダイヤモンドリーグ4戦3勝のM.アレクナ(23、リトアニア)はブリュッセル大会2位。しかしワニョニイ、コヴァクス、アレクナの3人は、最終戦チューリッヒ大会ではしっかりと優勝した。

今季一番のターゲットは9月の東京世界陸上である。8月に少し休養的な期間や練習を追い込む期間を設け、トップコンディションに意識的に上げなかった選手もいるだろう。8月のダイヤモンドリーグの結果は、評価が難しい部分もある。

男子の日本選手は8月のダイヤモンドリーグで以下の戦績だった。

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◆シレジア大会(8月16日)
長谷川直人(新潟アルビレックスRC)男子走高跳9位・2m22
ディーン元気(ミズノ)男子やり投8位・67m91
◆ブリュッセル大会(8月22日)
真野友博(九電工)男子走高跳4位・2m18
◆チューリッヒ大会(8月28日)
村竹ラシッド(JAL)男子110mハードル8位・14秒39(追い風0.3m)
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長谷川は12日のブダペスト(ハンガリー)の大会で2m27で優勝し、シレジア大会出場が急きょ決まった。Road to Tokyo 2025の世界ランキングで、日本人3番手だが安全圏に入っていた。しかし瀬古優斗(FAAS)がAthlete Night Games in FUKUI(8月15日)で、東京世界陸上の参加標準記録の2m33を跳んだため、代表に入ることはできなかった。

同じ種目の真野は代表入りが確実な状況で遠征した。できれば標準記録を跳びたかったが、ダイヤモンドリーグの4位は、東京世界陸上に向けてモチベーションを上げられる結果だった。

ディーンと村竹の8位は、記録を見ても、何らかのアクシデントがあったと推測できた。村竹は帰国後に次のように説明をした。

「(スタートから1台目までの7歩のうち)最初の4歩が大きなストライドとパワーで行けたのですが、その分キレ味がなく、5、6、7歩が上手く刻めませんでした。1台目が近いと感じて、あんな(上方向に跳ぶ)踏み切りになってしまったんです。そこから無理矢理追い上げて、変にダメージが残ると世界陸上にも響きます。せっかくのファイナルでしたが、そのレースは捨てさせてもらって、無事ゴールすることを優先しました。一瞬の判断でしたが、世界選手権にかける方を取りました」

世界陸上本番前に技術的な課題を確認でき、やるべきことが明確になったとプラスにとらえ、最後の2~3週間に向かって行く。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)