不安定な世界情勢を背景に、いま「核への依存」が存在感を増しています。
「核抑止」の問題点を整理し、核兵器廃絶に向け歩みを進めるための足がかりを、専門家と探ります。

(2018年の被爆体験講話のようす)被爆者・下平 作江 さん「黒焦げの遺体が横たわっていました。あ、母だ!と思った私たちは『母ちゃーん』とその死体に手を触れました。その死体はバラバラバラと崩れていったんです。せめて最後に母の手を握りたかったですね」

核兵器が何をもたらすのかを、その存在と証言で示し続けてきた被爆者たち。

日本被団協のノーベル平和賞受賞は、核兵器が二度と使われてはならないことを、改めて世界に伝えました。

核兵器廃絶への決意新たに始まった被爆80年ー。

長崎原爆被災者協議会 田中 重光 会長「核兵器をなくしていく。核のタブーをもっともっと強くしていく。そういう年にしていきたいと思います」
しかし…ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃は長期化し、核の威嚇も行われています。
2025年6月には、事実上の核保有国であるイスラエルが、核開発疑惑国・イランを、安全保障上の「懸念」を理由に先制攻撃しました。
これに対し、イランも報復。さらに、アメリカが軍事介入し、イランの核関連施設を空爆するなど、一触即発の事態となりました。
長崎の被爆者は…

長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会 川野 浩一 議長「武力的に優位に立っている国々が、いつも力で抑えつけよう抑えつけようとしている。しかし、それは、一時的には抑えつけることができたとしても、根本的な解決にはなっていないですから」

長崎原爆被災者協議会 横山 照子 副会長「一番こわいことが起こってきたと。もう悔しいやら悲しいやら驚きやら」

長崎大学核兵器廃絶研究センター・RECNAが、2025年6月に発表した「実際に使える世界の現役核弾頭数」は、9615。 2018年以降、364増えています。

不安定な世界情勢を背景に核軍拡が進むと同時に、「安全保障を核兵器に頼るべき」との考えが拡がっています。
EU=ヨーロッパ連合唯一の核保有国・フランスは、2025年3月「フランスの核の傘をヨーロッパの同盟国にも拡大する議論を始める」と表明。

ロシア、中国、北朝鮮の核の脅威を背景に、日本の石破総理もアメリカの核の共有を検討すべきとの考えを持っています。

アメリカの団体が毎年発表する人類滅亡までの残り時間を示す終末時計は、滅亡を表す午前0時まで「あと89秒」と、これまでで最も短くなりました。

理由の一つに核リスクを挙げ、「核兵器を持たない国が、独自の核兵器開発を検討することはもはや珍しくない」としています。














