日本を代表する伝統芸能の「能」。その技を受け継ぐ男子高校生がこのほど広島県福山市の能楽堂で主役を務めました。

100年以上の歴史を持つ「喜多流大島能楽堂」。ここを受け継ぐ大島家の6代目、高校2年生の大島伊織さんです。普段は学校がある東京で暮らしていますが、翌日に定期公演を控え、帰っていました。

能楽師大島輝久さん
「まず左の時は、手をうごかしちゃダメ。左、右~」
伊織さんは3歳のときに能を始め、5代目の父・大島輝久(てるひさ)さんから指導を受けてきました。

大島伊織さん(当時5歳)
「うーん、やっぱりパパのおかげで良かった」

今回、伊織さんは主役である「シテ」を務めます。剣造りの名工のもとに不思議な少年や狐が現れる「小鍛冶」という演目。その少年と狐の二役を、能面を付け替えて演じます。

大島伊織さん(16)
「この面(=能面)は「慈童」という面なんですけど、10代くらいの少年を描いた面になります」
大島伊織さん
「これは「小飛出」という面になります。主にケダモノ。今回、こういうキツネのケモノとかですね、そういう役を演じる時によく使われたりします」

定期公演は、いわば大島家の晴れ舞台。そこで伊織さんがシテを演じるのは初めてで、伝統の重圧が重くのしかかります。

大島輝久さん
「柱のきわに、なんなら手がちょっと当たるぐらいの気持ちで」
父・輝久さんの指導にも熱が入ります。

大島輝久さん
「ああいうことは基本的なことではあるんですが、基礎力をどのくらい高められるかということになってくるんですね」

大島伊織さん
「父からいろいろ、あれが違う、これが違うと言われて、まだまだだなあと自分も思いましたし、明日に対する思いが強くなったかなと思います」

そして、公演当日。いよいよ「小鍛冶」の演目が始まり、伊織さんが舞台に登場しました。

緑の装束の伊織さん「小鍛冶」のあらすじは、こうです。剣作りを帝から命じられた名工のもとに不思議な少年が出現。「剣造りを助ける」と約束して姿を消します。

そして名工が剣を作ろうとすると、今度は神の使いの狐が現れ、名工とともに剣を打ちます。少年と狐の2つの役を演じ分ける難しい演目。シテとしての役目を無事、果たしました。

大島伊織さん
「定期(公演)でシテを舞わさせてもらうことによって、大人として少し、成長というか、また、一段階上がれたのかなと思います」

伊織さんのシテの演じぶりについて父・輝久さんはこう話しています。
「まだまだ荒削りではありますが、今の息子なりに精一杯務めたことは本人にとっても良い経験になったと思う。多くの人に支えられて能が舞えることを改めて心に留め、これからしっかり精進してもらいたい」

伊織さんは11月に再び福山市の大島能楽堂での定期公演に出演する予定だということです。