夫の気持ち

裁判では夫も証人として出廷した。
検察官 頼まれたら介護に協力していた?
夫 そのつもりです。
検察官 ないがしろにしたのは1月が初めて?
夫 おそらくそうだと思います。
知らないところで妻がこらえていた可能性もありますが。
仕事から帰って妻が晩ごはんの準備をしている時に、
痰の吸引や体位交換をしていましたが、
帰ってきてケアを頼まれることはありませんでした。
疲れていると気遣ってか。
検察官 悩みを2人で話し合っていましたか
夫 仕事に行っているので妻に任せていました。
妻に先生などと話してもらってその結果を聞いていました。
検察官 心菜ちゃんはどんな存在?
夫 宝ですね。
とにかく元気に産んであげられなくて申し訳ない。
姿を見て月日が経つと頑張って生きているんだなと。
妻のケアのおかげで生きることができて頑張ったねと思うと、
もっとかわいく思って抱きしめた記憶があります。
検察官 介護について悩みは?
夫 歳をとるにつれて知っていくことも増えるので不安でした。
私たちも歳をとると体力が無くなりますが、それに反比例して娘は大きくなる。
成長に伴ってリスクが出ると聞いていたこともあって、
先生の指示を仰ぎながらケアをしていましたが不安なことはたくさんでした。
裁判官 3人での外出先は、どのように決めていましたか
夫 肌で四季を感じてほしいと思い、
春は桜を見に行ったり夏には川に行って洗面器に水を汲んで足をつけたり、
秋には渓谷に紅葉を見に行ったりしました。
事件が起きた年末年始にも話しが及んだ。
弁護士 年末年始は疲れていた?
夫 疲れていたのもあるし連休が続いてたるんでいました。
弁護士 3日は昼寝を?
夫 その通りです。
弁護士 起こされたのは?
夫 午後2時半か3時くらいです。
弁護士 何と言われた?
夫 体交(体位交換)手伝って、と。
弁護士 あなたはどうしましたか
夫 いつもに比べて準備がまごついていたので、
舌打ちをして『寝れないじゃないか』とか暴言を吐いてしまいました。
弁護士 妻は?
夫 もう大丈夫よ、1人でするからと。
気分を害したのかと思いました。
だけど、よろしくと言って、そこまで深刻に考えていませんでした。
弁護士 体位交換で気をつけるところは?
夫 心菜は筋力がなく肩が抜けたり骨折のおそれがあったので
妻が作ったバンドを用意する必要がありました。
慣れた2人でも10分から15分くらいかかります。
弁護士 夫婦喧嘩は?
夫 年に1、2回くらいだったと思います。
私が意地っ張りで謝ることはしない。
時間が解決することを待って、一方的に別室にこもることがありました。
弁護士 同窓会から戻ったのは?
夫 深夜1時か2時です。
弁護士 体位交換をしようかと声をかけましたか
夫 大丈夫と言われました。
怒っているというかあきれているというかそんな様子でした。
弁護士 1月4日は何時に目を覚ましましたか
夫 午前11時から12時くらいだったと思います。
弁護士 妻は?
夫 心菜のリビングの横の部屋で電気もつけずにいて異様な雰囲気だと思いました。
『同窓会に行っていいよ』と言ったら、行かないと言ったか、
首を横に振ったか覚えていませんが、そのような感じでした。
その時にとんでもないことをしたなと思いました。
私は寝室にこもり1人で携帯を触ったり本を読んだり1人で過ごしていました。
部屋にお菓子が常備されていたのでお菓子でしのいでいました。
弁護士 事件当日の1月5日は顔を合わせていない?
夫 その通りです。
喧嘩をした際、これくらいの期間を要してしまうので何も思いませんでした。
心菜のケアをしていたので時間が経てばほとぼりが冷めるだろうと
思っていました。
弁護士 なぜ部屋の外に出たのですか
夫 飲み物を飲もうとしていたと思います。
弁護士 妻が無理心中をするとは?
夫 思っていませんでした。
弁護士 現場を見てどう感じましたか
夫 気が動転していてなんとかしたいと思っていました。
夫は法廷で、後悔する気持ちを涙ながらに語った。
夫
「私の発言や親族の発言、私が妻に任せきりになり負担をかけた8年間でした。
気丈に振る舞い妥協せず心菜のケアをしてくれたことに感謝しています。
そんな妻を正直刑務所なんかに入れたくありません。
私も親族も執行猶予を望んでいます」