ポケモンカードやワンピースカードゲームのヒットにより、トレーディングカード(トレカ)市場は1兆円を超える規模にまで成長し、過熱ぶりが注目を集めています。なぜこれほどまでに人々はトレカに魅了されるのか。その歴史的背景から、偽造品や投機バブルといった市場が抱える課題まで、リサーチャーのcomugiさんの分析を交えながら、トレカビジネスの最前線に迫ります。

<東京ビジネスハブ>
TBSラジオが制作する経済情報Podcast。注目すべきビジネストピックをナビゲーターの野村高文と、週替わりのプレゼンターが語り合います。今回は2025年8月3日の配信「トレカ熱狂!ビジネスとして学ぶ『トレーディングカード最前線』」を抜粋してお届けします。

1兆円市場の正体とは? 注目される「キダルト」需要

野村:ポケモンやワンピースなど、トレーディングカード市場はますます活況になっています。特に、ポケモン社が公表した世界累計の発行枚数は2024年3月末時点で648億枚以上とのことで、凄まじい勢いを感じます。

comugi:もはや紙幣を刷っているのと大差がないレベルですよね。この比喩は決して間違っていなくて、トレカは需要と供給で価格が成り立っています。

特徴的なのは二次流通市場が活発な点で、街のトレカショップやCtoCでの取引、さらには国境を越えたECサイトでの売買も盛んです。発行枚数という供給をベースに価格が決まる点は、金融に近い概念かもしれません。

野村:やはり市場は拡大しているのですね。

comugi:2023年度の市場規模は1兆円を超えました。これを牽引しているのはポケモンですが、市場が広がった一因は、ワンピースカードゲームなど他のカードゲームがヒットしたことです。

王者ポケモンをワンピースが追い、そこにウルトラマンやゴジラ、ガンダムといった昔からのIPも反応してトレカ化される。これは市場全体が盛り上がっている証拠だと思います。

最近のおもちゃ市場では「キダルト」という言葉をよく聞きます。キッズとアダルトを組み合わせた造語で、要するに子どもの頃に欲しかったおもちゃを、大人になって経済力を持ったことで自由に買える、という現象です。

野村:“大人買い”ができてしまうわけですね。

comugi:そうなんです。懐かしくて買ってしまう。大人、つまり親が子どもと一緒に楽しむような、世代を超えた需要が長く愛されているIPほど存在するのです。

少しトレカから外れますが、ガンダムのプラモデルが非常に売上を伸ばしているのも、このキダルト需要に応えている一例です。単価も昔より上がり、1万円、2万円といった高価なプラモデルも売れています。