戦後50年以降、10年ごとに発表されてきた「総理談話」についてです。石破総理は、15日の終戦の日に合わせた戦後80年の総理談話発表を見送る方針です。一体なぜなのでしょうか。
安倍談話の壁が理由か?石破総理は「総理談話」を見送る理由

高柳光希キャスター:
「総理談話」とは、戦後50年以降、10年ごとに各年の総理大臣が発表してきた“閣議決定が必要な政府公式の文書”のことで、非常に重要なものです。
戦後50年:村山談話
戦後60年:小泉談話
戦後70年:安倍談話
→総理談話の発表は“閣議決定が必要”

あくまで一例ですが、どのぐらい時間をかけて作るのかというと、2015年の安倍談話の時は発表の半年前から有識者を集めて会議を行って、綿密に練っていたということです。
一方で石破総理は、戦後80年の総理談話について、早い段階で談話を出さない意向を固めていたということですが、一体なぜなのでしょうか。

TBS報道局政治部 中島哲平 官邸キャップ:
石破総理は元々、「戦争がなぜ起きたのか」「戦争をなぜ止められなかったのか」ということに強い問題意識を持っていました。また、10年後(戦後90年)になると、戦争を経験した世代の方々がかなり亡くなられてしまう。
これらの理由から、戦後80年のタイミングでしっかりと検証したいという思いがありましたが、談話を出すことに党内で反発の声がかなり大きかったんです。
具体的には自民党の保守派に、「“安倍談話”で戦後の談話は完了」したという認識があり、いわゆる戦後の歴史認識の問題については解決済みだという声があがっているほか、「謝罪外交を復活させるのでは」という懸念。
そして、安倍派の議員を中心に、安倍元総理の政敵でもあった石破総理が「安倍談話を上書きするようなことは許せない」という思いもあったようです。
井上貴博キャスター:
石破総理としては談話を出すことに強い思いを持っていたが、石破総理らしさを出すのか、党内の空気を読むのか、の狭間だったのでしょうか。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
安倍元総理の70年談話は、「子や孫の世代にこれ以上謝罪をさせたくない」と言っていて、これは事実上、保守派の人たちからすると「70年談話で終わりで、80年談話出さない」という表明です。
その壁を石破総理が突き破れなかったというのが現実で、今回の談話の見送りは石破総理の弱さが出たかなと思います。綺麗事は言うけれど、それを談話という形で実現できないところで、石破総理の限界が見えたと思います。
出水麻衣キャスター:
安倍元総理としては「これで終わりにする」という明確な意思があって、安倍談話を出したということですよね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
そういう意思で談話も出しましたし、その後の安倍元総理の回顧録にも「もう80年談話は必要ない」と明確に言っているので、安倍元総理の系列の人からすると「80年談話なんかとんでもない」と思っていますから、石破総理はそれに対して臆したのだと思います。
井上キャスター:
談話の準備に半年ぐらいかかるとすると、だいぶ前からやっておかなければならない。石破総理は早い段階で諦めたということなのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
石破総理は、自分が考えていることをスケジュール的に練ることが非常に不得意です。今までは、それを森山幹事長がやっていましたが、今や森山幹事長もやや政権から距離を置いているので、結局、石破総理の思うような談話は発出できないままということになります。