新型コロナウイルスの感染対策では中心的な役割を果たしてきた厚生労働省。コロナの流行が始まってから2年以上経った今でも、ニュースなどでその名前を聞かない日はありません。コロナ対策のみならず、担当する業務は医療や介護、年金に労働問題など多岐に渡り、業務量と残業時間の多さから、省内では「厚生労働省では無く“強制労働省”だ」との自虐的な声も聞こえてきます。
ただ、厚労省はコロナ禍で広まった「テレワーク」や男性版の育休である「産後パパ育休制度」など“働き方改革”を推進する省庁でもあります。旗振り役の厚労省でどこまで働き方改革が進んでいるのか、取材をしてみました。

■まるで“不夜城”霞ヶ関で一際目立つ輝き

11月2日。終電の時間を過ぎた深夜24時の東京・霞が関を訪れました。周辺のビルの灯りは消え、静まりかえる日比谷公園を横目に一際輝きを放っていたのは厚生労働省が入る、中央合同庁舎第5号館です。


公道から見える範囲でも、半分近くの部屋に灯りがついている状態。周りの建物と比べても群を抜いています。この週は臨時国会が開かれ、法案の可決に向けて佳境を迎えていた頃。翌日3日は「文化の日」で祝日ですが、多くの職員が遅くまで残業していたようです。


厚労省の現役職員(30代・女性)
「国会対応の担当になると、連日午前1時から2時のタクシー帰りが続くこともある。忙しくて晩ご飯を食べる時間すら無く、午後11時に閉店する省内のコンビニに駆け込むことも多い。厚労行政にはやりがいを感じているが、これからずっとモチベーションが続くか不安」

■常態化する長時間労働「国会答弁」作成に朝方まで…

長時間労働となる要因の一つにあげられているのが「国会答弁の作成」です。
国会で法律案などを審議する場合、国会議員が政府に質問を事前に通告し、それをもとに各省庁の担当者が答弁を作成します。議論の中身を深めるためには大事な業務ではあるのですが、質問の通告が審議の前夜などになってしまうと作業が朝方までかかってしまうことも。

さらに最近はコロナへの対応も加わり、職員の残業時間が最大で200時間を超えていた月もありました。終電を逃した際の帰宅時や、始発前の早朝出勤をする際に使ったタクシー代の総額は昨年度でなんと2億6000万円以上。

厚労省など国家公務員の「キャリア官僚」として採用され、10年未満で退職した職員は2013年度は76人でしたが、2020年度には109人と、近年は増加傾向にあるといいます。

厚労省 幹部職員
「最近は若い人だけではなくて、中堅どころの40歳ぐらいまでも辞めている。仕事はギリギリで回っておらず、本来やるべき色々な業務を犠牲にしている状況です」