外出して日常生活送ることが難しい現状…「骨髄移植」を希望することに

 再生不良性貧血は、子どもの場合、100万人に2人が発症する難病です。血液を作る細胞のもととなる造血幹細胞に異常が起きます。免疫力が落ちて感染症にかかったり、貧血や出血の症状が出やすく、まれに白血病になることもあります。入院して免疫抑制療法と呼ばれる投薬治療を受けるのが中心ですが、薬が効かない場合などは移植が必要となります。

 (国立がん研究センター・造血幹細胞移植科 福田隆浩医師)
 「免疫抑制療法が開発されて、(骨髄)移植なしで回復される人も増えてきているんですけれども、特に若い人や小さい子はずっと免疫抑制剤を飲み続けないといけないということを考えると、いいドナーさんがいれば骨髄移植などで治療を終わらせる」
 謙智君は免疫抑制療法では血液の値が十分回復せず、医師から移植を提案されます。謙智君の血液の状態では感染症にかかりやすく、外出して日常生活を送ることは難しいのです。早く家に帰りたいと願う謙智君の望みが叶う方法は移植だと家族は決断しました。骨髄バンクに登録しドナーが見つかるのを待つことにしましたが、厳しい現実につきあたります。

 (謙智君の父 田中浩章さん)
 「最終的にドナー提供するという意思表示に関しても、ご家族の同意がないと提供者になれないルールもあるので、(ドナーが)見つかったタイミングから(提供まで)3か月はかかると思ってくださいと言われている状況ですね。なので、その間の3か月は病室で提供いただくまでの日々を待つことになると思います」

「HLAが合わない」など移植までに多くの“関門”

 骨髄移植は血液型ではなくHLAという白血球の型が適合しているとうまくいきます。親子で合うことは少なく、兄弟で4分の1、他人となると数百人から数万人に1人適合するといわれています。謙智君の主治医は骨髄バンクに登録されているドナーのデータを頻繁にチェックしますが、HLAが十分に合わないなど様々な理由で提供に結びつかないと話します。

 (名古屋第一赤十字病院 吉田奈央医師)
 「移植に至るまでに患者さん側の問題だったりドナーさん側の問題だったり、とてもたくさんの“関門”がありますね。特にこのコロナ禍においては、患者さんがコロナに感染してしばらく移植ができないとか、実際に移植を延期した患者さんもいらっしゃいます。ドナーさん側も、登録して選ばれてからも健康に気をつけないといけないです」

 謙智君の場合、ドナー候補となる人が11人見つかりましたが、最終的に提供に至りませんでした。