今後の400mと4×400mリレーの代表選考プロセスは?
冒頭でも触れたが、中島は標準記録を突破しても代表確定にはならない。
男子400mは日本選手権終了時に標準記録突破者がゼロで、世界陸上代表内定者が出なかった。日本選手権後は日本選手権入賞者で、標準記録を新たに突破した選手が代表に選考される。該当選手が複数出た場合は日本選手権の順位が優先される。3位以内の選手が標準記録を突破すれば代表が確定したが、中島は日本選手権で4位だった。
だが標準記録の44秒85は日本歴代4位に相当し、簡単に出せるタイムではない。中島の代表入りの可能性は高い。400m代表は自動的に4×400mリレーにもエントリーされる。メダルを目標とする4×400mリレーはどんなメンバーになるのだろうか。
がリレー候補競技者で日本選手権入賞者。リレー候補競技者基準記録は45秒29で中島、佐藤風、平川慧(19、東洋大2年)、今泉堅貴(23、内田洋行AC)の4人が突破しているが、佐藤風は日本選手権で1位入線したがレーン内側のラインを踏んで失格してしまった。平川は故障の影響もあって日本選手権で入賞できなかった。もしも中島が個人種目の代表入りができなくても、選考基準<2>で日本選手権優勝の今泉と中島は4×400mリレー代表入りする。
「風雅さんが世界ランキングで代表入りできる位置にいましたが、最低でも個人で2人は代表になるようでないと、4×400mリレーで決勝に行けません。4×400mリレーを引っ張る使命感もあって、日本のために北麓で標準記録を切ろうと思っていました」(中島)
4×400mリレーのは「選考競技会および参考競技会(400m/200m/4×400mリレー)の成績を総合的に勘案し、リレーの特性と戦略を考慮して選考する」となっている。佐藤風は間違いなくこの基準で選ばれるだろう。平川は故障からの回復を陸連がどう判断するか。その他では日本選手権2位の田邉奨(19、中大2年)と同3位の吉津拓歩(26、ミキハウス)、アジア選手権2位の佐藤拳らが候補だ。
佐藤拳は4×400mリレーでも日本のエースとして実績を残してきた。大学2年生の田邉は成長著しく、パリ五輪代表だった吉津には安定性が感じられる。平川が復調すれば400mで44秒台を出す可能性もある。
昨年のパリ五輪3走だった川端魁人(26、中京大クラブ)は、今季はアキレス腱痛の治療を優先し、200mには出場しているが400mは走っていない。また、200mの20秒38もリレー候補競技者基準記録で、2人が突破しているが4×100mリレーとの兼ね合いもあり、その2人が4×400mリレーを走る可能性はかなり低い。
現時点で代表入りする可能性が高いのは中島、今泉、佐藤風の3人で、ここに佐藤拳が復調して加わればメダルを狙う布陣になる。
悲願の世界大会決勝と4×400mリレーのメダル獲得へ
中島は22年のオレゴン世界陸上、23年のブダペスト世界陸上、そして昨年のパリ五輪と3年連続日本代表入りしてきた。オレゴンは4×400mリレー4走で4位に入賞し、ブダペストは400mで決勝進出にあと1人と迫り、パリ五輪は4×400mリレーでアジア新記録での6位入賞に貢献した。客観的には健闘してきたが、中島自身は悔しさが大きかった。
「オレゴンはメダルを逃しましたし、ブダペストは個人の決勝を逃しました。パリはケガもあって個人もリレーも良くありませんでした。自分のやりたいことと現実が合わず、もがいていた感じです。失敗のくびきから抜け出すことが、一番のモチベーションでした」
大腿のケガで順調とは言えなかったが、ケガをしたことで走りを見直すことができた。世界陸上までの間に日本記録(佐藤拳が23年のブダペスト世界陸上予選でマークした44秒77)更新を狙うプランもある。
「23年に45秒0台、45秒1台を(6レース)安定して走りましたが、殻を破れませんでした。(23~24年の冬期に)アメリカにも長期間行って大きく進化してやろうと思いましたが、昨年もケガをして23年を超えられませんでした。今年も世界陸上を頑張るぞ、というところでまたケガをしてしまった。今回やっと44秒台を出せた感じもありますが、自分としては記録がやっとポテンシャルに付いてきてくれたと思っています。世界陸上は個人(400m)の決勝進出と、4×400mリレーのメダル獲得が目標です。ここを出発点に、あと1か月半でしっかり準備していきます」
代表に入り始めて4年目、いよいよ中島が潜在能力を発揮する時が来た。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)