酒造りは全くの素人...師匠を訪ね運命の出会いが!
―――まずは、どこから手を付けたのですか?
代々守ってきた酒蔵のことを考えた時、多角経営をした状態で潰れてしまうとご先祖さまに申し訳が立たないなと。そこで、酒造り以外の事業を全部売却して、酒造りに集中しようと思いました。酒造りを本気でやってみて、無理だったら会社を畳もうと。酒は売れないから在庫がいっぱいあるわけですよ。この酒がおいしくないのは分かりつつも、「どう変えていけばいいかわからない」という状態でしたね。
―――大学は文系でそのあと営業マンですから、酒造りは未経験ですもんね。
そんなある日、奈良県天理市にある銘酒を扱う居酒屋さんを知り、経営者の杉野公一さんに会いに行ったんです。僕は「いつか杉野さんの店に並んだ銘酒の中に入れてもらいたい」と思いましたが、どうやったら良い酒が造れるのか全く分からない。正直に「教えてください!」と杉野さんにお願いしました。すると杉野さんは、「今度、私の師匠にあたる長谷川浩一社長を紹介する」と。
―――杉野さんに師匠がいたわけですね。つまり、師匠の師匠が。
師匠の師匠は東京・港区にある「はせがわ酒店」の長谷川浩一社長でした。杉野さんは「長谷川さんが近々、奈良に来る」と教えてくれました。「その時にお前の蔵にお連れするわ」と。後日、長谷川社長が蔵に来られて「蔵を見せて」と。当時は改革前の蔵ですから、蔵がすごく汚いわけですよ。蔵の奥に行けば行くほど長谷川社長の顔が曇ってきて、座敷に戻って来た時には完全に顔がキレてるんですよね。「酒はこれなんです」と出したら、「あんな汚い蔵で造った酒なんか飲みたくない」と言って帰ろうとするんです。