備蓄米の放出で値下がりが続いていた米の販売価格が、10週ぶりに値上がりに転じました。

価格安定に向けて期待が集まる「新米」の収穫ですが、今年の厳しい暑さの影響が心配されています。

5日も最高気温が29℃に達した、北海道新十津川町。

たわわに実った稲穂が収穫の時を待っていました。

 米農家・橋本和昌さん
「やっぱり今年はちょっと例年より刈り取りが早くなるのではと感じています」

生育は順調だとしながらも、連日の暑さに危機感を感じていました。

 米農家・橋本和昌さん
「コメは、日中は暖かくて、夜涼しくないといいものができない。(暑さが続くと)コメが白くなる病気や、収量の減少などが考えられる」

 本州では暑さに加え、河川やダムの水が不足する「渇水」が深刻化していますが、道内では水不足の心配はないと言います。

 こうしたなか、コメ価格高騰を受けた政府の検証で、国はインバウンド需要などを見通せなかったことを認め、コメ政策を転換し、増産に舵を切りました。

米農家・橋本和昌さん
「日本の産業であるコメをたくさん作って、余れば海外に輸出するような形をつくったほうが、これからの農業を守っていけるんじゃないかなと思います」

 全国のスーパーで販売された、7月21日~27日のコメ5キロあたりの平均価格は、前の週より40円高い3625円でした。

政府備蓄米の放出で、下落傾向だった価格が10週ぶりに値上がりに転じました。

一連の価格高騰の動きを受けて、道は生産や流通、消費に関わる事業者を招いた意見交換会を初めて開きました。

 北海道農政部・花岡弘毅生産振興局長
「安ければ安いほどいいというわけではなくて、生産者がきちんと再生産する価格と、消費者の方も納得できる、双方が納得できる価格が大事」

コメの値段は下がるのか。

専門家は、新米の流通で価格が大きく下がることは考えにくいと指摘します。

 宮城大学・大泉一貫名誉教授
「東北・北陸で高温障害あるいは水不足が顕著ですので、その悪影響がでると4000円を超して4200円も超していくような状況が出てくる可能性があります」

価格を押し上げる要因はほかにもあるといいます。

備蓄米です。

 宮城大学・大泉一貫名誉教授
「平均価格っていうのは、入札備蓄米と随意契約米で力技で下げているわけですよ。それが8月にはもうなくなります。生産調整をするという農政から、増産を目指す農政に変わっていくんだろうと思います。これを農水省がどのように実現するかということに関しては、まだ課題が多いと思います」

東北・北陸で新米の不作が予想される中、価格の安定に向けて北海道の作況に大きな関心が集まります。