意思疎通が難しい入所者も頷き… 「介護美容」が高齢者の“張り合い”に

「アライブ」に入所するBさん(90)は、ほとんど意思疎通ができないというが、前述のケアビューティスト・箱石さんは丁寧に声をかけながら施術をしていく。

指と指の間に隙間がなくなるほど、ガチガチに固まってしまっていたBさんの足も、お湯につけるとふわっと広がり、リラックスできている様子が見てとれた。

施術が終わり、施設の担当者が「気持ちよかったですか?」と声をかけると、Bさんは施術中、初めて頷くという反応を示した。わずかながらも、ケアが心の奥に響いた瞬間に思えた。

介護付き有料老人ホーム「アライブ」の担当者
「介護美容の効果はすごく感じます。ネイルやメイクが変わることで、入所者さま同士であったり、入所者さまとスタッフ間であったり、会話のきっかけにもなります。施術を受けたあと、明るくなられたという話を聞くこともあります。入所者さまの“張り合い”になっていると思います」

ケアビューティスト 箱石さん
「ケアをしている側ですが、笑顔や『ありがとう』の言葉に元気をもらうことも多く、やりがいを感じています」

介護業界の人材不足解消へ 地方の“見守り”の機能も

ミライプロジェクトの中村さんは、「介護美容」が介護業界の人材不足などに良い影響をもたらすことを期待しているという。

ミライプロジェクト 中村真未さん
「入口が『美容』という面であっても、介護の現場に人が増えるきっかけになると思っています。実際、介護美容研究所の卒業生の中には、ケアビューティストを目指す中で、介護に興味を持ち、介護職に転身した人もいます。

介護美容が地方にも広まれば、個人宅への訪問で美容を施す中で、独居の高齢者の“見守り”の機能も果たすのではないかと思っています」