気象庁は24日から、津波を正常に観測できない場合に「欠測」という情報を新たに発表するようになりました。2024年1月の能登半島地震でも課題となった「欠測」とは、どういった事態を指し、情報が発表されれば私たちはどう行動すればいいのでしょうか。

“潮が引いている”のに「1.2mの津波」漁師が感じた異変

2024年1月1日に石川県で最大震度7を観測した能登半島地震では、直後に石川県能登地方に大津波警報が発表されました。最大で高さ5メートルの津波に襲われた一方で、津波の観測情報はなかなか住民に伝わりませんでした。

輪島市で30年以上、漁師を続ける沖崎勝敏さん(51)は、元日に親戚で集まっていたところ、激しい揺れに襲われました。輪島港では船を津波から守ろうと、震度7の地震の4分前にあった最大震度5強の地震を機に船を沖へ逃がす「沖出し」をした漁師もいましたが、沖崎さんは家族ととともに高台に避難することを選択しました。

輪島港に置き去りにするしかなかった大切な漁船。沖崎さんは「半ばあきらめだった。あの揺れでは人命優先だった」と振り返ります。

新造すれば1億円以上かかる漁船 沖崎さんは「命には代えられない」と話す=2025年7月、石川県輪島市の輪島港

沖崎さんが高台に避難していた頃、気象庁は輪島港で「1.2m以上の津波が観測された」と発表。JNNも緊急報道番組の中で「輪島港で1.2m以上の津波観測」と伝えました。

当時JNNが放送した津波の観測情報 輪島港は1.2m以上と表示されている

沖崎さんは、港の様子を見に行った漁師仲間からは「潮が引いている」と伝えられました。引き波なら「大きな津波が来るんじゃないか」。しかし津波警報が解除されたあとも、輪島港は干上がったまま。多くの船は底をつき、港の外に出られなくなりました。

沖崎勝敏さん
「1日たっても2日たっても津波は来ず、水が引いた状態だったので、おかしいぞと。あとから聞いたら隆起だった」

地震後の修理を経て漁に出られるようになった沖崎さんの漁船=2025年7月、石川県輪島市の輪島港