なぜ石破総理は続投を表明? 政権運営や“最大の争点”はどうなる?

小川彩佳キャスター:
続投を表明した石破総理ですが、党内では石破おろしが既に出てきているんですね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
今回の事態はそもそも非常に深刻なんです。与党が衆議院でも参議院でも少数なので、法案や予算案を出しても通らないということですから、国政が進まないというのが実態です。

ただ、自民党の中には「今の状況で総理を買って出る人はいないんじゃないか」という声もあり、おそらく石破総理も高をくくっているんだと思います。総裁選になれば手を挙げる人も出ると思いますが、今ここで自分が粘ればまだしのげると思っているんだと思います。

藤森祥平キャスター:
まさに粘ろうとしているようなんですが、実際、内心は石破総理としてはもうやめるタイミングをはからなければいけない状況にあるんじゃないんですか?

星浩さん:
選挙中は「もしかしたら辞任に至るかもしれない」と思っていたようですが、石破総理としては、一つは関税の日米交渉があるということと、もう一つは連立の補充をして、ある程度メドをつけてから自分がその身を引くということなら考えざるを得ないとは思っているようです。

藤森キャスター:
ただ、このまま続けていこうとすると、石破総理はこれまで以上に国会運営も含めて、野党に対してとにかく手を差し伸べていかないといけないと、これまで以上に協力が必要になりますよね。

星浩さん:
数を補充するには野党と組まないといけないわけですが、今の野党はなかなかネガティブな対応です。

【野党との連立は?】
立憲「必要性はない」
国民「石破政権とはあり得ない」
参政「自民党の党内改革を」
維新「現時点で考えていない」

維新に関しては「現時点で考えていない」ということで、石破総理も淡い期待は持っていますが、実際にはそう簡単にはいかないと思います。

今回の選挙で示された民意とかけ離れた政権なので、長く存続するというのは無理があると思います。

小川キャスター:
「国難に近い状況だから政治の空白を生めない」ということで石破総理は続投を宣言したわけですが、選挙後の枠組みもかなり不透明で、「国難だからこそ今の政権に任せられない」という声がこの選挙の結果なんだという見方もできるわけですよね。

米重さんは有権者の声をどう受け止めますか?

JX通信社 代表取締役 米重克洋さん:
石破総理が続投するということに関しては、やはり内閣支持率などには必ず、かなりネガティブに響くと思います。

私自身、年中世論調査の分析などをやっていますが、やはり選挙のアナウンスメント効果というのは非常に大きくて、「負けた」とか、あるいは衆院選に続いて都議選も含め「3連敗である」ということに関しては、自民党支持層の中での石破内閣の支持率というのは多分かなり下がると思うんです。

今回の選挙の一番大きな敗因というのは、2024年の衆院選も同じなんですが、「物価高に端を発する若い世代の離反」と私は分析しています。

特に20代~50代の若い世代を中心に自民党からかなり離れていって、しかもその受け皿が国民民主党や参政党になったことで、かつての安倍政権の時と比べると相当ダメージを受けているという現状があるんです。

なので、その支持構造を根本的に再建するというようなことをしないと、自民党は支持率を回復できず、このままの状態では相当難しいだろうなと思います。

藤森キャスター:
そういう点では、総理の続投というのは?

米重克洋さん:
支持層には受け入れがたいでしょうね。

藤森キャスター:
選挙は終わりましたが、何よりも「とにかく政策の実現を急いでほしい」というのが1票を投じた有権者の思いだと思います。「給付」や「減税」など散々議論しましたよね。

星浩さん:
非常に皮肉なことが起きて少数与党になったもんですから、給付を盛り込んだ補正予算案を仮に出しても、野党が反対して実現しないと。一方で、野党でも減税の考え方が違うので、減税もそう簡単に進みそうにないですね。

今回の選挙は、物価高に対する対応を有権者が選択して、「何らか手を打ってくれ」という悲鳴に近い投票があったわけですが、現実はこういう構造で政策が進まないということになってしまうので、これはやはり政治の最高責任者である石破総理が身を引くなどの打開策をいずれ検討せざるを得ないと思います。私の見立てではもって秋までだと思いますね。

藤森キャスター:
とにかく政策も前に進めてもらわないとですね。

小川キャスター:
何も手が打たれないというのが国民にとって最も不幸な状況ですからね。

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〈プロフィール〉
米重克洋さん
JX通信社 代表取締役
世論調査や選挙分析などを手がける

星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年 福島県出身