“新ルート開拓”するべく新たな場所に飛び込む
後日、吉田さんを訪ねると、険しい表情でパソコンと向き合っていました。
(東来軒・店主 吉田裕幸さん)
「夜に回るラーメンの新ルートを検索しているんです」
店を継いで1年あまり。この間、新型コロナウイルスによる体育館の閉鎖などで卓球関連の仕事が激減。新ルートの開拓でラーメンの売り上げを伸ばしたいといいます。
狙いをつけたのは大阪府枚方市にある居酒屋などが立ち並ぶエリア。
(吉田さん)「スナック街へ行こうかなと思っています。飛びこみで」
(記者)「飛び込みで!?」
これぞ“吉田流”。しかし…。
(吉田さん)「あ…閉まってますわ、スナック。誤算ですね」
ほかのスナックも軒並み定休日でした。
幸先の悪い展開。打開策として向かったのは、複数の棟が並ぶ集合住宅です。うまくいけば一気に売れるチャンス。しばし待つことに。しかし、待てども待てどもお客さんは現れません。
(吉田さん)「うーん。ちょっとお客さんが出てこないのでここは諦めますね」
新ルート開拓の洗礼を浴びた吉田さん。あてもなく走り出してしまいました。不穏な空気が漂っていたその時でした。
(吉田さん)「こんばんは」
(2人組)「こんばんは」
ついにお客さんが現れました。吉田さんの後ろ姿に躍動感が戻っていきます。懐かしい音色に飛び起きたという人もいました。
(娘と来た母親)
「もう布団に入っていました。娘がテレビを見ている時に『音が聞こえているから出てみよう』と言われて」
(母親)「この辺って回ってはるんですか?」
(吉田さん)「今日はたまたま、そこの府営住宅に行っていたんですよ」
(母親)「耳が良い娘が『聞こえてきた』と言っていたので慌てて来ました」
(吉田さん)「ありがとうございます」
結局2時間で16杯の売上。初日としては上々の結果です。
(東来軒・店主 吉田裕幸さん)
「半分諦めもありましたけど、やっぱりこの音が聞こえて出てきてもらうっていうのは僕もすごくうれしいので。この音だけは消したくない、なくしたくないというのが僕の思いですね」
昭和の灯を絶やさない。京都のチャルメラ物語はまだ始まったばかりです。
(2022年11月15日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)