なぜ医療費は増え続けるのか?

2040年には約80兆円になるという厚労省の試算もある国民医療費。なぜ、これほどまでに膨らみ続けているのでしょうか。第一生命経済研究所の谷口智明研究理事にその理由を聞きました。
1つ目は「高齢者の増加」です。日本では今年、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となります。さらに2040年代には、第二次ベビーブーム世代が70代に突入します。医療を必要とする機会が増え、これが医療費全体を押し上げる大きな要因となっています。
2つ目は「医療高度化と薬の高額化」です。例えば、白血病の治療薬「キムリア」は、患者の免疫細胞に遺伝子操作を加えてがん細胞への攻撃力を高めるという薬ですが、1回の投与で約3264万円もかかります。
難病である脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」は、約1億6707万円と桁違いの価格です。こうした治療も高額療養費制度などがあるため、患者が全額を負担するわけではありませんが、全体への影響は避けられません。

また7割の病院が赤字で、入ってくるお金が増えないのに、人件費や医療資材や機器の高騰で出ていくお金は増えるという指摘もあります。こうした経営難は特に地方において病院の閉鎖や医師不足といった深刻な問題を引き起こす一因ともなっています。