通称使用で起こる「プライバシー」の問題

所浩代さんは、「ハラスメント」「プライバシー」の点でも、問題があると指摘する。

福岡大学 所浩代 教授(労働法)
「もう一つはあまり議論されていないんですけれど、プライバシーの問題です。通称の併記が許されたり、パスポートと国家資格に括弧書きで旧姓と戸籍の名前が併記されるようになったとしても、その通称が併記されている女性は、そうした書類をみると『結婚しているかどうか』ということが明らかになってしまうということなんです。結婚して通称を使っている女性は、公的な書類に通称が認められたとしても、名字が併記されていることで、結婚しているかどうかがビジネスシーンで明らかになってしまう。結婚しているということが表になれば、ハラスメントが起きる可能性もありますし、将来、『この方結婚しているから男性と同じくらい働けないんじゃないか』という懸念を持たれる可能性もある。プライバシーの確保という点からも、プライバシーが守られる形でビジネスに参加できるという環境を整える必要があると思います」