ウクライナ侵攻は短期間で終わる。プーチン大統領だけでなく、アメリカの国防総省すらもそうした見立てを持っていたが、現実は違うものになっている。事態が長引くことはウクライナ、ロシア双方に犠牲が増えることになるが、その裏でプーチン大統領の誤算の幅も広くなっているのではないだろうか。

まずは誤算の1つ。ひとつはロシアの予想を超えるウクライナの抵抗。その原動力となっているのゼレンスキー大統領だ。ウクライナ側は三度の暗殺の危機があったと述べているが、彼の存在について識者に聞いた。


■今、殺したらゼレンスキー大統領が殉教者になってしまう、ロシアはそれを避けたい

日本時間の3月6日朝、ゼレンスキー大統領がSNSで自らの存在と思いをアピールした。
コメントの中で日時を強調しつつ、こう訴えた。

ゼレンスキー大統領
「私はここに残る 私はキエフに残る・・・」

投稿された映像には大統領府の隣の建物を敢えて映り込ませ、自分がキエフの大統領府に現在いることを強調していた。

ヨーロッパの国際関係を研究する筑波大学の東野篤子准教授は、映像を見て言う。

筑波大学 東野篤子准教授
「今回思い知らされたのはゼレンスキー大統領のSNSを中心とした発信の卓越した巧さだと思います。彼は大統領になった時に政治的なキャリアがないということで国内外から軽く見られていた。ところが政権を作っていく間に優秀な専門家の集団を備えて、本当に人の話をよく聞くという評判が立ちました。それによって数年間でこのように生まれ変わった。それが戦争によってさらに一皮むけた。どうやって人の心をつかむか、どのようなメッセージを発するか、とても巧い。これはロシアとの情報戦でもある。ロシアは定期的に『ゼレンスキーは逃げるらしい』という情報をまく。これに対し『私はここにいる』『絶対逃げない』こうするとロシア側に居場所が分かってしまう。ロシアの殺害リストに入っているゼレンスキー大統領にしてみれば非常に危険。そうしたギリギリのところで情報戦が戦われている」