各党が語らない物価高対策の「デメリット」

物価高対策として与野党が掲げる「給付」と「消費税減税」。しかし、それぞれにはあまり語られていないデメリットがある。

給付金のデメリットとしては、コロナ禍の10万円給付と同様に、多くが貯蓄に回ってしまい、経済活性化につながらない可能性がある。また、石破総理が懸念するように、現在の経済状況は、コロナ禍のような深刻な不況ではなく、物価高の中でも過去最高益を出している企業もある。そうした中で、経済成長の恩恵を受けている人にまで給付を行う必要があるのかという疑問も残る。

一方、消費税減税にも課題がある。物価高の中で景気を刺激すれば、需要が増えてさらなる物価高を招く恐れがある。また、減税によって国債の信用度が下がれば金利が上昇し、住宅ローンなども上がって、結局は国民の負担増になりかねない。さらに、消費税率を変更するためのシステム改修にも時間がかかり、すぐには実施できない。人によっては「そんなのすぐにできる」と言う人もいるが、システムのメーカーに実際に取材してみると、半年から1年程度の時間がかかるとの声が聞こえた。

また、消費税減税を「時限的」とする野党の主張にも疑問が残る。政府はデフレ脱却を掲げ、物価は既に上昇局面にある。物価が上がっていくことが予想される中、一度実施した減税を、元に戻すことは政治的に難しい。減税は一度やったら「やめるタイミング」が難しいという見方もあるのだ。

税金というのは基本的に国の財政の基盤となるものでもある。税を一つだけいじるというのは、国の財政のバランスが崩れてきてしまうという視点も忘れてはならない。

参院選の結果が与党の政権運営、ひいては国民生活に大きな影響を与えることは明らかだ。給付か消費税減税か、あるいはそのどちらでもないのか。各党が語らない「デメリット」も、有権者は見ていく必要がある。

TBS政治部 官邸キャップ 中島哲平