■先住民のイヌイットたち…グリーンランド女性の「絶望」と「目標」
グリーンランドへの注目が高まる中、先住民のイヌイットたちもルーツに誇りを持ちはじめている。
独立派の活動家パニングワクさん。顔や手に入れているのはイヌイット文化の象徴「刺青」だ。ポジティブな雰囲気が溢れてくる今の彼女からは想像もつかないが、13歳から酒浸りになり16歳と19歳の時に自殺未遂をしている。

パニングワクさん
「“自分はこのままずっと劣った人間” “将来はない”。素晴らしい人生なんて来ないんだと確信していたんです」
パニングワクさんのストーリーは、グリーンランドでは珍しいことではない。
イヌイットの間ではアルコール依存の問題が深刻で、自殺率は世界最悪レベルだ。そこには「長年続いてきた差別による自尊心の低さが関係している」とパニングワクさんは話す。
「デンマーク語ができなければまともな教育が受けられません。言語を奪われ、文化や伝統を抑圧されれば、死に追いやられるのも当然です」
パニングワクさんの母親は子供のころ、デンマークに送られて「デンマーク人化
教育」をされた一人だ。この「実験」は愚策としての評価が定まっているが、今でもデンマークから下に見られ、抑圧されてきたことが精神構造に影響を与えているとパニングワクさんは言う。だからこそ独立が必要なのだ、と。独立ですべてが解決するわけではないが、スタートにはなる、と。
彼女は今、次の世代のためにもイヌイットのポジティブなイメージを発信し続けている。私の世代で負の連鎖を断ちたい、と話す。

「自分のためだけではなく、子供たちのためでもあります。私が10代の頃はグリーンランド人のロールモデルがいませんでした。だから今、私がそれになろうとしているんです」
■温暖化とグリーンランドの未来「自分たち自身のことを考える時が来ている」
政治的にも精神的にも独立を志向するグリーンランド。では、もし独立した場合、この分断や対立が深まる世界で彼らはどんな道を選択するのだろうか。
リリ・ケミニツさん
「私はグリーンランドは対話をオープンにして、一番いい条件を出すところを選ぶべきだと思います。自分たち自身のことを考える時が来ています」

温暖化が広げるグリーンランドの可能性とそれをめぐる大国の思惑の中で、グリーンランドの人たちは自分たちの航路を切り開いていくことになる。














