伝説の記録 セビリアでの疾走

1999年世界陸上セビリア大会での400m決勝。5レーンにスタンバイしたジョンソンはスタート直後、すぐに先頭に立った。200mを過ぎたあたりから2位の選手との差はどんどん開き、300mを31秒66で通過すると完全に独走状態に入った。そして世界新記録となる43秒18を叩き出し、金メダルを獲得した。

1999年セビリア大会 男子400m

ジョンソンはレースを振り返りこう語っている。

ジョンソン:
この大会は世界記録のチャンスだと思っていたんだ。スタジアムも観客も最高の雰囲気だった。スタートして次の瞬間には(世界記録を)出せると確信して走っていた。

ジョンソンが小谷さんに語ったピーク・エクスペリエンスのエピソードは、彼が過去の経験として話してくれたものであり、セビリアでの世界新記録のレース時に起きた状態を指すものではない。しかし彼の言葉から、そのような特別な感覚が起こり得るということをイメージすると、彼のパフォーマンスがさらに魅力的に映るのかもしれない。

■マイケル・ジョンソン(57、アメリカ)1967年9月13日生まれ
1991年 世界陸上東京大会 男子200m 金
1993年 世界陸上シュツットガルト大会 400m、4 ×400mリレー 金
1995年 世界陸上イエテボリ大会 200m、400mの2冠を達成
1996年 アトランタ五輪 200m 世界記録を樹立
1997年 世界陸上アテネ大会 400m 金
1999年 世界陸上セビリア大会 400m 世界新記録(43秒18)を樹立し4連覇達成

【小谷実可子さん プロフィール】
アーティスティックスイミング(旧シンクロナイズドスイミング)でソウル五輪に出場し、ソロ・デュエットともに銅メダルを獲得。夏季五輪で初の女性旗手も務める。引退後は東京2020招致アンバサダーなど五輪・教育関連で要職を歴任。10を超える役職と家庭を両立させながら56歳で競技に復帰。2023年世界マスターズ水泳選手権アーティスティックスイミングのチーム、ソロ、デュエットで金メダルを獲得。今年8月、同大会に再び出場する予定。TBSテレビ「世界陸上」では1997年から13大会連続でサブトラックリポーターを務めた。