■新法案成立でわいせつ教員への免許再交付拒否が可能に 残された課題は

教育現場における性被害をめぐって、2021年5月、新たな法案が成立した。教員による子供へのわいせつ行為を防ぐことを目指した“わいせつ教員対策法”。

教員免許は、懲戒免職などで失効しても3年経てば再交付が可能だ。つまり教育現場に復帰することができるが、この法律により、各自治体の教育委員会の判断で再交付を拒否できるようになった。しかし、課題も残されている。

保護者
「元教諭が、今どこで何をしているのかということが非常に気になって。その後ずっとネットで名前を検索するようなことが続いたんですけども。ある日、他県にある放課後デイサービスのHPに、その名前を見つけまして・・・」

放課後等デイサービスとは、障害がある子どもたちが放課後や休日などに利用できる施設。複数の児童へのわいせつ行為があったとして、懲戒免職となった元教員はここに転職していたのだ。 さらにHPには、懲戒免職で失効したはずの教員免許が、セールスポイントのように記されていた。

保護者
「放課後デイサービスは、自分が被害を受けたことを親に伝える、身近な大人に伝えることが、より難しいお子さんが多いのかなと想像しますと。どこまでも子どもと関わる職場に行きたいのだなと思って、怒りさえ感じました」

150人を超える小児性愛障害の治療にあたってきた斉藤章佳氏。このうち、およそ3割が、子どもと直接関わる仕事に就いていたと明かす。

精神保健福祉士 斉藤章佳氏
「学校の教員然り、塾の講師、スポーツインストラクター、保育士、幼稚園教諭。ほとんどの人は最初、やっぱり子どもが好きだから、子どもに関わる仕事を選ぶ。その中に子どもと性的に接触をしたいという気も入っているわけです。やはり、一度子どもに対して加害行為を行った者が、子どもに関わる職業を選択できないようにするシステムをどのように作っていくかというのは、これからの大きな課題かなと思います」

■“無犯罪証明”制度の創設へ向けて 進む議論と導入へのハードル

新たな制度の創設に向けた動きも、国会で始まっている。
制度の創設に向けて活動している、NPO法人の前田晃平さん。自民党の国会議員事務所を訪問し、ある制度についての議論を進める。

NPO法人「フローレンス」 前田晃平氏
「今回は、以前からもご相談させていただいている『日本版DBS』をいかに実現していくかということでご相談にあがりました」

『DBS』とは、“無犯罪証明書”、つまり犯罪をしていないことを証明する書類を発行するイギリスの公的機関のことだ。イギリスでは、この書類がなければ18歳未満の子どもに1日2時間以上接する職業に就くことができない。窃盗や詐欺といった犯罪も対象となる。
現在、ドイツやスウェーデンなどでも同様の取り組みが行われていて、日本でも、導入に向けて超党派の議員連盟が立ち上がるなど、本格的な議論がスタートしている。

しかし、導入に向けては、ハードルも多い。加害者の犯歴に関する個人情報保護の問題。そして、『職業選択の自由』との兼ね合いだ。犯歴のある人がむやみに社会から排除されないよう配慮すべきとの声もあがっている。
そのため、日本版DBSでは、対象を性犯罪に限る方向で議論が進められているという。

NPO法人「フローレンス」 前田晃平氏
「本当に守らなければいけないものは何なのか。確かに法制度を変えることによって生まれるリスクは間違いなくあるのは認識できるんですが、やっぱり私たちは子どもを守らないといけない。そのために職業選択の自由を大切にしながらも、その法制度でもって適切な運用ができればいいと思います」

(報道特集2021年11月20日放送より抜粋・編集)
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