混乱を極めた大統領選、ルーマニア人たちは何を思う?
首都ブカレストに住み、ニュース取材のコーディネーターなども務めているミハエラ・シギナシさんに今のルーマニアの状況などについて直接話を聞いてみた。
Q:優勢と言われながら、なぜ、シミオン氏は負けたのか?
A:化けの皮がはがれたのだと思います。これまでシミオン氏はTikTokの短い動画でメッセージを発信して支持者の気持ちを掴んできました。しかしテレビの討論会では、準備不足で自信のなさを露呈していました。経済の立て直しなどルーマニアが抱える重要な問題に対しての解決策については言っていることが無茶苦茶で、「この人、大丈夫なのか」という印象が一気に広まったと思います。決選投票では、1回目の投票に行かなかった人も「これはまずい」と思って投票に行ったことが、逆転につながったんじゃないかと思います。
Q:得票率は拮抗していたが、社会の分断は起きているのか?
A:いまだに混乱しています。シミオン氏の支持者らは結果を受け入れておらず、選挙結果が操作されたなどと言っています。家庭レベルでも意見が分かれていて、家族が不仲になったと聞いたこともあります。経済は最悪で物価も上がり続けているのに、この国はどうなってしまうのかとても心配です。
Q:今後のウクライナ支援はどうなる?
A:シミオン氏は選挙戦の中で「ウクライナへの支援は一切しない」と言っていました。その主張に魅力を感じたルーマニア人は多かったと思います。ルーマニアでの生活は非常に厳しくなってきています。そんな中で「なぜウクライナを支援しないといけないのか」と感じている人はかなり多いからです。大統領になったダン氏は支援を継続すると言っていますが、どこまで世論と向き合っていけるのか、難しい状況だと思います。

混迷の東欧を象徴!ルーマニアとは逆の結果になったポーランド大統領選挙
ルーマニアと共にウクライナの隣国として、ウクライナ支援では主導的な役割も果たしているポーランド。2023年に政権交代してトゥスク氏が首相を務めている。
ポーランドでは、外交など政治の実権は首相が握っているが、大統領は法案の拒否権を持っている。トゥスク首相は、かつてEU大統領を務めた経験もあり、親EUを象徴する人物で、司法の独立や性的マイノリティの権利などについて改革を進めようとしてきたが、右派の野党出身のドゥダ大統領が再三にわたって法案に拒否権を発動するなど「ねじれ」の状況が続いてきた。
そのドゥダ大統領の任期満了に伴う大統領選挙の決選投票が6月1日に行われた。決選投票前の1回目の投票では、トゥスク首相の中道与党の候補で首都ワルシャワ市長のチャスコフスキ氏が得票率31%で首位に、右派野党が推すナブロツキ氏が得票率29%の2位で、この2人による決選投票となった。
今回の大統領選に勝利し、ねじれを解消したかったトゥスク首相だったが、決選投票の結果は1.7ポイント差の僅差で右派の野党候補ナブロツキ氏が逆転で勝利した。ナブロツキ氏は「反EU・ウクライナのNATO加盟に反対」などと主張していて、トゥスク首相の政策を妨害する恐れがあり、首相の求心力が低下するとの見方も出ている。

右派の大統領継続で混乱が続くことになったポーランド。この結果にいち早く支持を表明したのが、ハンガリーのオルバン首相だった。「素晴らしい勝利、おめでとうございます。協力できることを楽しみにしています」「Powodzenia, Panie Prezydencie! 」(ポーランド語:頑張ってください、大統領!)