半世紀を超えて「情熱が支える伝統」

入船亭扇橋 師匠

続いては、熊本城のふもと「桜の馬場 城彩苑」。6月7日、こちらでも別の落語会が開かれていました。

新進気鋭の真打、入船亭扇橋(いりふねてい・せんきょう)師匠。38歳の若さで落語界の最高位「真打」に昇進し、現存する寄席では最古となる東京上野の鈴本演芸場などで取りを飾る、若手注目株の落語家です。

熊本での独演会は今回が初めて。この独演会を企画したのは、上田博司さん(78)。大学時代に落語研究会を立ち上げるほどの落語愛で、54年もの長きにわたり東京や大阪からプロを招いた落語会を開いてきました。

入船亭扇橋 師匠(左)と談話する上田博司さん(右)

上田博司さん「地方では落語を聞く生の会が無いんですよ。だったら自分たちで呼ぼうということで、プロを読んで聞くという。最初は自己満足の会でした」

この日、入船亭扇橋 師匠が演じたのは、大道芸としても知られる「がまの油」。儲けた金で酒を飲み、ベロベロに酔ったガマの油売りが、またもうひと儲けできそうだと口上を並べ始めますが、酒のせいでだんだんおかしくなっていくという噺です。

地方では珍しい、歴史あるプロの独演会に観客はこう話します。

観客「マイクなしで、直に声が聞ける。本当に上手な落語家の話を二つぐらい、長いものをじっくり聞けるというのも、魅力ですよね。テレビだと短い時間でしか聞けないので、それが最大の魅力だと思ってずっと来ています」

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熊本で落語を支える二つの異なる落語会。記事では伝えきれない臨場感や、出演者の本音はラジオでお楽しみいただけます。

RKKラジオで、6月28日(土)午前8時30分~『くまもと音十色「ちょいと一席 熊本で」』を放送します。