「なぜ自分だけうまくいかないのか」55歳での診断…生きづらさの理由

君塚監督は子どもの頃から、周囲の人とは異なる感覚を持っていることに気づいていました。

砂が足につく感触が耐えられなかったり、母親の作ったもの以外は食べられなかったり、道を覚えるのが苦手だったり。しかし、それが障害の特性だとは知りませんでした。

映画「星より静かに」 君塚匠監督
「海や砂場に入れないですよね。砂が足についちゃったのは気持ち悪くて。母親がビニール袋をグルグル巻いて、それで入ってたっていう」

これはADHDの人に多く見られる「触覚過敏」と呼ばれる特性で、わずかな刺激でも強い不快感を覚えることがあります。

また学校生活でも。
映画「星より静かに」 君塚匠監督
「挙動不審。教室の中、授業中に歩いちゃったりとか。前の席の人のシャツに何か習字いっぱいかけちゃったりとか、あとはじっとしていられない。集中力が欠けるわけです。様々な問題はありましたね」

発達障害の一つであるADHD(注意欠如多動症)は、年齢に比べて注意力が散漫になったり、衝動的で落ち着きがなかったりといった特性があり、日本にはおよそ300万人の当事者がいるとされています。この特性について専門家に聞きました。

さくらまちハートクリニック 荒井秀樹院長
「(ADHDの特性は)多動性、衝動性、不注意と言われますが、それぞれの症状がオーバーラップしているので、どの症状が一番強く出てるかは個人差が大きい。お子さんだと多動性が多く出ますが、大人になってくるとだんだんそういう多動傾向は影を潜めてくるので、他の症状がメインになってくるから、同じ人でも時期によって症状の出方が変わってくる」

社会に出てからも、なぜ自分だけうまくいかないのかという違和感を抱え続けてきた君塚監督。ある日、インタビュー中に寝てしまうという失敗を経験します。

映画「星より静かに」 君塚匠監督
「プロデューサーとかみんないて、もう真っ白になっちゃって。超多忙な俳優さんのスケジュールを区切って(時間を作ってもらい)、インタビュー受けに行ったんで、もうめちゃめちゃになっちゃって」

この出来事をきっかけに医師の診察を受けた結果、55歳でようやくADHDと診断されました。