初夏の風物詩、ホタル観賞をしてみませんか?
蒸し暑く暗い夜、ふと目にする川沿いの草むらに、ふわっと浮かぶ黄緑の光。闇の中に浮かぶその光景は、どこか幻想的で、不思議な魅力に満ちています。
きっとその正体は、ホタル(【画像①】はゲンジボタル)。日本の夏を象徴する、儚くも美しい存在ですね。しかし、その光には知られざる進化の知恵と、自然界の複雑なドラマが秘められているのです。
昆虫に詳しい、東洋産業の大野竜徳さんに聞きました。

ー改めて、ホタルはどんな虫なのでしょうか?
(東洋産業 大野竜徳さん)
「近年は都市化や環境の変化で、ホタルの姿を身近に見る機会が減ってしまいました」
「ですが、郊外の小さな河川や田園地帯、湿地や森林の中では、今でも出会える場所があります」
「ホタルは『コウチュウ目ホタル科』に属する昆虫で、世界に約2,200種、日本には約50種が生息しています。その中でも実際に光る種は10種ほど」
「さらに、私たちが夏の風物詩として親しんでいるホタルは、主に以下の3種です」
「ゲンジボタル(日本最大の種。川沿いに生息し、2秒間隔でゆったりと光ります)」
「ヘイケボタル(水田や農村部の用水路に多く、テンポよくふわふわと光ります)」
「ヒメボタル(湿った山林に生息。地面近くを低く飛びながら、鋭く点滅するような光を放ちます)」
「日中に見かけるホタルの仲間もいますが、これらは光りません。たとえば『オバボタル』の仲間は昼行性で、体は似ていても発光せず、光るホタルだ!と思って捕まえてみたら、残念、人(虫)違いということも」
ー昼行性の蛍もいるんですね。
「また、『ホタルモドキ(ホタルモドキ科)』や『ジョウカイボン(ジョウカイボン科)』といった昆虫たちも、名前や見た目がホタルに似ていますが、まったく別のグループに属し、発光しません」
「これらの虫たちがホタルに似ているのは、天敵に対する『擬態(ぎたい)』(毒や不快物質を持つ生物に似せる防御手段)と考えられています」