“バンカーバスター”の使用はあるのか?元中東支局長に聞く今後のポイント

小川彩佳キャスター:
激しくなっていくイスラエルとイランの攻撃の応酬は、さらにエスカレートしていくのでしょうか。今後のポイントを教えてください。

元JNN中東支局長 秌場聖治記者:
アメリカが本格的に参加するかというところだと思います。トランプ氏は必ずしもイランと戦争したがっていたわけではありません。就任当初から「ピースメーカーとして記憶されたい」と、しかも「中東での戦争に引きずり込まれたくはない」と考えていたと思われます。

一方で、イスラエルのネタニヤフ氏はアメリカを引きずり込みたいという思惑があります。その理由の一つが、「バンカーバスター」です。ここのところ、ネタニヤフ氏やイスラエル側から「イランの上空の制空権は我々も握っている」と繰り返し言っていたのは、アメリカに対して「安全に空爆できます」いうメッセージにも取れました。

藤森祥平キャスター:
地下80mほどに位置するとみられている核施設を攻撃するには、「バンカーバスター」という武器が必要だと言われています。様々な背景や事情があるにせよ、このような攻撃を許していいのかという見方もあります。

トラウデン直美さん:
核施設に対して攻撃をした場合、周辺にどのような影響があるのでしょうか。

秌場記者:
IAEAのトップも非常に懸念し、自制を促しています。
これまでにナタンズなどで攻撃がありましたが、施設の外で放射性物質が検知されレベルが上がったということは、まだ確認されていません。

実際にバンカーバスターで貫通できるかどうかは、やってみないとわかりません。使用した場合に何が起きるかというのは、まだわかりません。もちろん、地下はかなり深いので、影響は限定的だという見方もありますが、非常に懸念されています。

小川キャスター:
核施設を仮に破壊することができたとしても、必ずしも核開発を止めるということにはならないわけで、イスラエルは何を想定して、どこまで行こうと考えているのでしょうか。

秌場記者:
核施設を攻撃したり、核科学者を暗殺したりすることで、核計画を後退させることはできます。

ですが、イランはやり方を知っているので、再び核開発を進めようとするでしょうし、今回これだけの攻撃を受けたので「やはり核兵器がないとやられる」と思って、核兵器を持とうとする意志が強くなる可能性はあります。

核兵器を二度と持たせないように、政権転覆までネタニヤフ氏が考えているかどうか、まだわかりません。しかも、政権を転覆させたとして、その後に何が待っているかもわかりません。

中央政府のグリップがなくなって、例えば過激派が入ってくるなどしたら、中東地域あるいはアメリカにとっても望ましいことではないし、新しくできるかもしれない政権が、必ずしも親イスラエルかというと、そうではないのではないかというのもあります。

そのあたりに関して、イスラエルあるいはトランプ氏が何らかの計画を持っているのか、まだ見えてきません。

小川キャスター:
こうしている間にも、ガザでの深刻な状況は変わらず続いている訳ですよね。

秌場記者:
その通りです。そちらは何も変化はなく、ひどいままですので、目が逸れてしまうかもしれませんが、そちらも忘れないでいたいです。

小川キャスター:
異常性の中で、異常を認識できなくなる恐ろしさというのも同時に感じます。

================
<プロフィール>

秌場聖治
元JNN中東支局長
シリア内戦など中東各地を取材