熊本市に流れ込む一級河川の白川(しらかわ)は、周辺の市街地よりも高い所を流れているため、「天井川(てんじょうがわ)」とも呼ばれています。

かつて氾濫した白川の洪水リスクと対策の最前線です。

洪水対策の要『阿蘇立野ダム』

熊本市中心部から約25キロ上流にある阿蘇立野ダムは2024年2月に完成し、白川の洪水対策の要とも言える施設です。

阿蘇立野ダム

ダム本体の高さは約87メートルと熊本県庁の1.4倍。長さは約197メートルあります。

「穴あきダム」と呼ばれる洪水調節専用のダムで、ダム下部の穴から水が流れ、洪水の時だけ上流部で水を貯める構造です。

熊本河川国道事務所 堀之内亨太 建設専門官「ダムの中に入るためのエレベーター棟です」

エレベーターを出ると、長いトンネルが

ダムの最上部からエレベーターで約50メートル下のダムの内部に進みます。内部は点検用のトンネルが整備され、計測機器が数多く設置されています。

そしてトンネルの先にあったのが「穴あきダム」の「穴」の部分です。

堀之内建設専門官「(下の段の穴は)常に水が流れているところで、河川の流れを維持している。上流からの水が増えると、上の段の左右の2つの水門から水が出て、合計3門で洪水調節を実施します。3門で吐ききれない場合はダム上流側に貯める」

2024年1月。完成前に実施された水を貯めるテストの様子です。上流側に水が貯まると、まるで湖のようです。

2024年1月(試験湛水時)
2024年1月(試験湛水時)

堀之内建設専門官「この構造物ができたことで、ダムより下流に流れる水の量が確実に少なくなる」

雨が一気に熊本市内へ流れる地形

白川は阿蘇から熊本市を抜け、有明海へと注ぎます。上流、中流は急こう配になっているため、阿蘇のカルデラ内に降った雨水が集まり、一気に熊本市内へ流れ込む特徴があります。

さらに...。

記者「熊本市の水道町交差点ですが、大甲橋に向かって、緩やかな坂道になっています」

資料:国交省より

白川の下流は市街地よりも高いところを流れる「天井川」のため、川の水が堤防を超えれば市街地へ滑り台を下るように濁流が押し寄せます。