10年越しの捜査「真っ暗なトンネルの中をさまよっているよう」
最愛の息子を亡くした悲しみに加え、遺族にとって辛かったのは捜査が難航したことでした。犯人の逮捕に至るまでにかかった期間は、約10年10か月。未解決事件の被害者であった当時の思いを次のように話します。
「遺族の苦しみというのは、真っ暗なトンネルの中でさまよっているようなものです。なぜ息子が殺されなければならなかったのか。その原因がわからない、理由もわからない。悲しみや苦しみをぶつけるところがない。本当に苦しいものでした」
「しばらくの間はもう感情も抜け落ちて、抜け殻のようになっていました。感情が麻痺してしまって、もう考えることができない。眠れない、食べられない、怒れない。泣けない。もちろん笑うことなんてできない。ひょっとしたら生きる気力すらなくしていました。体が動かない。トイレに行きたいっていうような欲求までなくなってしまう。もうじっと座り込んで、気づけば朝、気づけば夜というような日々を過ごしました」