「今まで通りの生活を送りたい」 世界初・認知症の治療薬に一縷の望み
20キロ離れた奈良県の実家には、89歳になる母親・関田幸子さんが暮らしている。

娘の発病にショックを受けたが、一縷の望みをかけたのが新薬の「レカネマブ」だった。
美香さんの母 関田幸子さん
「いい薬ができたんだなって嬉しかったですよ。レカネマブ開発秘話とかね。書いてあるのは全部読みましたけどね。(発症が)まだ50代でというのはちょっと、あまりにも酷すぎるので、早すぎるので。本人もまだまだやりたいことがあるだろうと思って」

2023年、世界で初めて承認されたアルツハイマー型認知症の治療薬「レカネマブ」。日本とアメリカの製薬会社の共同開発で「レケンビ」という商品名で販売されている。日本ではこれまで8000人あまりの患者に投与されてきた。

アルツハイマー病は、脳の中にアミロイドベータとよばれるタンパク質が蓄積することで神経細胞が破壊され、脳機能が低下する病気だ。「レカネマブ」はこのアミロイドベータを除去する。
一度壊れた神経細胞を再生させることはできないが、アミロイドベータの蓄積で弱った神経細胞へのダメージを一時的に食い止め、認知症の進行を遅らせることができるという。

大阪公立大学医学部附属病院 武田景敏 医師
「完全に止めることができなくても、大きくゆっくりすることができて、より早期に気づいて治療することで自分らしく生きる期間を延ばすことができるというのが、やっぱり大きな意味なのかなと」
美香さんは、母・幸子さんの提案で「レカネマブ」の投与を受けることになった。
投与を始めたのは2024年1月。「今まで通りの生活を送りたい」と願う美香さんにとって、レカネマブの存在が唯一の希望。認知症の進行を遅らせたい一心なのだ。

美香さん
「お薬と先生に頼って祈るだけ」
2週に1回通院し、美香さんの場合、治療にかかる負担は年間約70万円。決して安くはないが、「今の状態がたとえ数十日でも保てるなら」と、治療費は母と兄が負担している。