定住の課題となっている、島の産業

三島村の人口は1960年におよそ1300人でしたが、現在は356人と65年間で7割以上も減りました。

定住の課題となっているのが島の産業で、三島村の1人当たりの所得は県内の市町村で最低の193万円です。村営の焼酎蔵など産業振興を進めていますが、3つの島に人口が分散し、物流や人の移動のハードルが高く、農業や畜産業などの一次産業に頼らざるを得ないのが現状です。

(硫黄島の集落支援員 棚次紫寿代さん)「島の中で椿油の価値を上げていかないと、そもそも風景を守ることができないと気づいた」

硫黄島の棚次紫寿代さん(45)です。

広島出身で、2018年に家族で島に移住。島に広がる椿の風景に惹かれ、島の集落支援員としておととしから椿オイルの製造を始めました。完成した商品はインターネットなどで販売しています。やりがいがある一方で次の世代に受け継ぐ難しさも感じています。

(硫黄島の集落支援員 棚次紫寿代さん)「(椿油に)興味を持った人が(島に)来てくれるかもという淡い期待もあったが、なりわいにしようとまでは思わない。外から人を連れてくるというのがすごくハードルが高いことが一番」

講演を聞いた棚次さん。日ごろ感じていた疑問を藻谷さんに投げかけます。

(棚次紫寿代さん)「今の時代はどんなに素敵な能力があっても、一度お金にかえなきゃいけない。そうじゃない関係性結べる経済はあるか」

(藻谷浩介さん)「お金から逃れるのは非常に難しい。実は知らない間に逃れているのは、都会では笑顔も全部お金で買う。東京では人間同士のサービスもお金にかわっている。島ではまだそこまでいっていない。調子が悪い、出かけなきゃいけないから(子どもを)見ていてくれなど、そういうことが頼めるだけでずっとマシ」

(硫黄島の集落支援員 棚次紫寿代さん)「自分で限界を感じていることも世界的に見るとそんなに絶望的な状況じゃないとわかった。この島にしかないもの、笑顔が無料で買える。そういうことを大事にしたい」

(藻谷浩介さん)「ほとんどの場所で住めないところは、住んでみてダメになった。(三島村が)900年続いたのは住めたから。日本もこんなところに1億2000万人も住んでるのか、資源もないのに、何でそんなことしているの。実はそのこと自体に価値がある。日本の象徴。900年続いたこの島が、いよいよ本当に人がいない、もう持ちません、残る人いません、終わりと言った時、こっそり日本が終わり始めている時。そうはならないと思う」

「島で受け継がれてきた暮らしを次世代に繋いでほしい」と話し、藻谷さんは黒島をあとにしました。