「この人に聞く」です。今回は韓国を代表する現代アーティスト、チェ・ジョンファさんです。
いま、湧水町の霧島アートの森で個展を開いているチェ・ジョンファさんに、生活道具などを生かした作品に込めた思いなどを聞きました。

うずたかく積み重ねられた鍋ややかんに、ポリバケツ。らせん状に連なるのは、漁で使われるブイです。
霧島アートの森で開かれているチェ・ジョンファさんの個展、「生生活活」。日常生活で誰かが使ってきた様々な道具がアート作品に生まれ変わっています。生活道具の多くは今回の個展のために鹿児島で集められたものです。

(チェ・ジョンファさん)「生活は、芸術になる遊び場。アートは高いものとか遠いもの、お金がかかるものではなくて、そばにあるもの、心の中にあるもの」Q.身の回りのものでできる「そうですね」

韓国を代表する現代アーティスト、チェ・ジョンファさん。2018年の平昌パラリンピックの開会式と閉会式ではアートディレクターを務めました。強烈な色使いやダイナミックな造形で知られています。

(チェ・ジョンファさん)「全部ビビンバ。ミックス(混ぜる)するのが一番重要」

今回の個展の特徴のひとつが、ものに手を加えず、そのままで見せる展示手法です。温泉の成分に長くさらされて変色した洗面器や、いす。そして配管。チェさんが数年前、霧島を訪れた際に、出会ったものです。

(チェ・ジョンファさん)「すごい色と、すごいマテリアル(素材)。ワクワクし、びっくりした。これは本物の芸術。これはここでしかできないもの。メイドイン鹿児島」

日用品に着目するチェさん。「生活」の視点を大切にしてきたといいます。

(チェ・ジョンファさん)「生活は幸せのため。幸せになりたい、みんな。それで一番重要なのが食べ物、それで鍋が重要」「生活=アート。原始時代からそうだった」

個展の会場には地元、湧水町の上場小学校の子どもたちがチェさんといっしょに日用品でつくった作品も展示されています。
日用品を生かしたチェさんの作品は見る人の創作意欲をかきたてる、そんな魅力も持っています。

(東京から来た来場者)「(作品作りが)できると思ったので、挑戦してみたい。小さいものならできそう」
(地元の小学生)「あれ絶対作れる」

霧島アートの森に2000年から常設展示されているチェさんの作品「あなたこそアート」。こんな思いが込められています。

(チェ・ジョンファさん)「心が一番重要なアートの出発点。(アートとは)テクニックではない。感じること、感じさせること。こちらの作品も『あなたこそアート』。私が作ったのはフレームだけ。みんなが主人公になる」

この作品をきっかけに鹿児島と縁ができたチェさん。

(チェ・ジョンファさん)「(鹿児島は)自然のイメージが強い。22年前来たときも、温泉に泊まったが、今も親しい友達がいる」「空気が良いから、いっぱい来たい」


今回の個展は新型コロナの影響で、2度の延期を経ての開催となりました。この間、チェさんは精力的に作品をつくってきたといいます。

(チェ・ジョンファさん)
「私はいつもみんなが参加する作品をつくるから。コロナで(人と人が)離れて、アートで集める。アートはコロナ。」

Q.それはどういう意味ですか?
「ウイルス、文化ウイルス」

Q.人から人に広がる?
「そうです。」

Q.でもコロナと違い、良い広がりですね。

「そうですね、はい。OK」


チェ・ジョンファさんの作品展、「生生活活」は湧水町の霧島アートの森で12月11日まで開かれています。