■仕事を失い、家族も妻もいなくなった…落ち込むところを笑いに
おととし、ふるさとに帰ってきた下田さん。周りの勧めもあり、認知症の当事者として支援活動の輪を広げる「大分県希望大使」に就任しました。
(下田さん)「同じような病気に悩んだり、これから病気になると心配したりしている人に『心配せんでいいばい、前を向いて歩いていけるばい』と伝えていきたいと思っています」
「大分県希望大使」は認知症の本人が体験をもとにした情報を発信することによって、県民に理解を深めてもらおうと県が2020年から始めた取り組みです。大分県内には下田さんを含めて4人の希望大使がいますが、認知症との向き合い方はそれぞれです。

(県希望大使・寺野清美さん)「この病気になったからこそ人の痛みや優しさがよりわかるようになり、家族や友人に心から感謝しています」
(県希望大使・佐藤彰さん)「私には恋人がいます。5歳の孫娘です。かわいいんですよ。いろいろなハリがあるとがんばれるんです。私の場合は『はなぴー』(孫娘)です。ほかの認知症の方も奥さんや旦那さん、趣味、なにか打ち込めることがあると意外と元気になると思います」
認知症やその家族、支援者が定期的に集まる「オレンジカフェひた」。下田さんがいれるこだわりコーヒーが振る舞われます。いろいろな悩みを抱える参加者に対して、認知症を公表している下田さんの生き方は多くの人の救いになっているようです。
(オレンジカフェひた実行委員・川浪和恵さん)「私は認知症と自分で発信したのでそんなにあっさり言っていいのか逆に私たちが勇気をもらった。あとはあの通りのキャラなので周りが自然と笑顔になれる。認知症になってもこれだけ明るく過ごせるんだなとお手本になるような人」
「県内各地を巡って認知症患者を元気づけたい」と意気込む下田さん。絶望の淵から這い上がり、希望を見出すために頼ったのが明るく笑う力でした。
(下田さん)「すべてなくなって家族も妻もいなくなったわけじゃないですか。落ち込んでしまう人はきっと危ない方にいってしまうと思う。自分の場合は落ち込むところを笑いに変えていった」
辛いことも笑いに変えることができる下田さん。これからもたくさん希望の輪を広げてくれそうです。
