「日本のアニメ・マンガ」がウクライナで若者たちの心の支えに
突然の軍事侵攻で生活を奪われて翻弄される市民の中に、日本が誇る文化を心の支えとしている少女がいました。15歳のアリーサ・ゴンチャロワさんは今年3月、ロシア軍の包囲下にあるマリウポリから南部のオデーサに避難してきました。
アリーサさんが避難先に持ち出したのは日本のマンガとアニメグッズでした。服などは持たず、これだけを布のカバンにいれて避難してきました。
(アリーサ・ゴンチャロワさん)
「『呪術廻戦』。『ハイキュー!!』の研磨。『東京卍リベンジャーズ』のマイキー。私にとってとても大切なものだからです。とても混乱して、この先どうなるかわからなくて、とにかく気に入っているものを持って行きました」
脱出した時の光景は今でも目に焼き付いているといいます。
(アリーサ・ゴンチャロワさん)
「(マリウポリから脱出する時)兵士の遺体を見ました。今も悪夢にうなされます。爆発する夢を見ます。よく眠れません」
この日、アリーサさんはキーウに避難した親友とテレビ電話をしました。共に学び、家を行き来して夜まで語り合っていたことが遠い昔のことのようです。
(アリーサさんの親友)「早く会えるといいね」
(アリーサさん)「私もよ。それはいつになるんだろうね」
マリウポリではチェロを習っていたアリーサさん。祖父母やおばは今もロシア軍支配下のマリウポリで暮らしています。アリーサさんの母はこの戦争がわが子を変えてしまったと感じていました。
(アリーサさんの母)
「私たちと一緒にいた子どもたちがとても急に大人になってしまった。とても急速に。子ども時代を盗まれた、人生が半分になる、それは子どもたちにとっていいことではない」
娘を心配した母はオデーサに避難してすぐアニメショップ「ヨロコビ」を訪れました。ここでは「東京卍リベンジャーズ」や「SPY×FAMILY」など日本のマンガが人気で、10代の若者がコスプレをして来店することもあるといいます。
(アリーサ・ゴンチャロワさん)
「私にたくさんの喜び、新しい知り合い、友人をもたらしてくれた場所。それに出会えてとても幸せです」
来店する若者の中にはアリーサさんと同じように日本のマンガやアニメを心の支えとしている人がいました。17歳のダーシャ・ボンダレーヴァさんです。
(ダーシャ・ボンダレーヴァさん)
「(日本のアニメは)刺激的でおもしろい。人生の意味も教えてくれます。今も日本のアニメをよく見ています。気晴らしになるので」
ウクライナ軍の中佐だった父は7月末に戦死しました。
(ダーシャ・ボンダレーヴァさん)
「お父さんに『元気?』とメールしたら『元気だよ』と返事がきました。(その3時間後)お父さんは殺されました」
彼女の心の支えになっているのも日本のマンガやアニメ。大好きなキャラクターのコスプレをしてSNSなどに動画をのせることで気持ちを和らげています。
(ダーシャ・ボンダレーヴァさん)
「愛する人々が失われないように全て終わってほしい。明日のこともわからないんです。何が起きるのかとても心配です。敵の人たちにも戦争を経験してほしくない」
マリウポリからオデーサに避難したアリーサさん。ロックバンドを描いた日本の漫画をきっかけにギターを習いはじめました。
(アリーサ・ゴンチャロワさん)
「ここでギターを習い始めて立ち直ることができました。もっと上手になりたいです。ささやかなコンサートを開きたいです」