芸人がよく使う「嫁」「旦那」

神戸:芸人さんがよく「うちの嫁がね」「旦那、どうなのさ?」とか言うよね。

橋本:あー、聞きますね。

神戸:僕はあんまり、いい感じがしないんですよね。「嫁」はもともと息子の妻のことも言うよね。関西の芸人さんたちの言葉がどんどんテレビを通じて広まっているような感じもしなくはないです。どちらにしても僕は、「旦那」とか「嫁」はどうかなあ……と思うんですけれども、「どういう場面で使うか」でも全然違います。極めてフォーマルな場所で、「うちの旦那がですねー」とは言わないですよね。こういう時になると「主人」になっちゃったりするんです。

神戸:でも「主人」は、ジェンダー上問題のある言葉の一つです。フォーマルで言いやすいのは、名前です。お葬式で、「夫の竜介が大変お世話になりました」「竜介は生前、このように申しておりました」。一方でもう一つ、名字があります。男性が亡くなった時、妻の喪主あいさつで「田畑が生前……」という言い方。

田畑:ありますね、確かに。

神戸:これ、逆はないんですよ。男性が妻に先立たれた時に「橋本が本当にお世話になりました」とは言わないんです。男性のみ名字で呼ぶのが成り立つのは、ジェンダー上問題がある言葉だということです。でも、ファーストネームだと大丈夫。個人と個人の関係で呼ぶのに支持が広がっていると思うんだけども、実はフォーマルなところではジェンダー上問題のある方が使いやすかったりする。この辺り、ちょっと気にした方がいいと思うのです。